雑穀物語NEXT〚第10話〛 ラーメンの祖先キビとアワ

この物語は、雑穀の魅力について正しく、わかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する信実のヒューマンドラマです。雑穀の有資格者を中心に、皆様から寄せられた雑穀にまつわる疑問についての答えを探していきます。


ミレイ
「グレオくん、好きな食べものってなに?」

グレオ
「うん、ラーメン、その中でも札幌みそラーメンだね。今までいろいろなラーメン食べてきたけど、やっぱり、ちぢれ麺の札幌みそラーメンが一番好きなんだ。ラーメンの麺って、地域によっていろいろと特徴あるけど、もとは中国から来たものだよね。原料は確か、コムギ粉だよね。」

ミレイ
「今はそうなんだけど、興味深いことに、推定4千年前の中国の古代遺跡から、雑穀で作った麺が見つかったのよ!」

グレオ
「え~、雑穀の麺!」

ミレイ
「そうよ、中国の内陸の方なんだけど、青海省海東市に位置する回族と土族の自治県で、中国科学院地質地球物理研究所によって発掘されたことが2005年に科学雑誌のNatureに掲載されたの。」

グレオ
「えっと、4千年前というと、日本では縄文時代だね。」

ミレイ
「そう、世界の歴史で見ると新石器時代のことね。それまで麺の発祥は、およそ1500年前と考えられていたので、世界最古の麺という大発見だったの。その麺は、椀として使われていた陶器の底にくっ付いていたんだけど、今のラーメンと形態がそっくりなのよ。」

グレオ
「ほー。」

ミレイ
「それで、その素材を分析した結果、今の麺の主な原料になっているコムギではなく、アワとキビであることがわかったのよ!」

グレオ
「うわー、ラーメンの始まりは雑穀なんだねー。」

ミレイ
「もしかしたら、そうかもね。でも、現在の日本では、生麺の公正規約というのがあって、コムギ粉にアルカリ塩水溶液の “かん水” を加えて、練り合わせて作った麺のことだけを “ラーメン” と表現して良いことになっているの。」

グレオ
「へ~、そーなんだ。」

ミレイ
「そう、だから、キビやアワを使った麺は、正確には、ラーメンの始まりではなく、うどんやそば、パスタを含めた麺料理すべての始まりといえるのよ。」

グレオ
「ということは、札幌みそラーメンを食べると、雑穀麺の進化系のラーメンを食べたっていえるね(笑)。」

ミレイ
「そうね、そうかもね。今度、原点回帰でキビとアワの麺で作ってあげるわね。」

グレオ
「お願いします、みそ味で!」

《解説》
井上直人博士(信州大学名誉教授)の書籍「そば学」では、麺に込められた古代のメッセージとして、雑穀麺のことが記されています。麺という形状は”作物の根”や”食料の源”、アワとキビの黄色は”土壌の色”や”大地に対する畏敬の気持ち”を表しており、また、麺が渦巻いているのは”黄河の水流”で表現し、”水に対する畏怖と畏敬の念”を込めているのではないのか。そしてこれら麺の色や形は”作物と土と水”を模しており、農耕儀礼にも使われてきた、生命のエネルギーを表すものと推測されています。その原点が雑穀であることは、とても感慨深いものがあります。

参考書籍
井上直人,そば学 sobalogy -食品科学から民俗学まで,柴田書店,2019.

登場人物紹介
  グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞と食べること。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ミレイはカフェのバイト仲間。

  ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強く、負けず嫌い。

 

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