〚第14話〛スーパーな雑穀を食する

『雑穀物語NEXT』
この物語は、古来から日本人の生活と密接に関わってきた、食の文化財ともいえる雑穀の価値と魅力について、正しくわかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する信実のヒューマンドラマです。雑穀エキスパート資格を持つ、雑穀が大好きなミレイとその友人グレオを中心に、様々なテーマで展開していきます。

ミレイ
「あれ、今日は店長、外出?」

グレオ
「そうみたい。スーパーマーケット食品の展示会に新しい情報探しに行ったみたいだよ。ほんと、スーパーと言うと、スーパーマーケットをイメージするくらい、馴染んでいる言葉だよね。」

ミレイ
「そうね、でも実は、スーパーマーケットって、市場を意味する “マーケット” に、普通を超えるという意味の “スーパー” を合成した造語なのよ。」

グレオ
「へ~、造語なんだ。でも、スーパーという言葉、他にも目にする機会多いよね。スーパー銭湯、スーパーカー、スーパーセール、スーパープレミアム、、、また、スーパーフードやスーパーボランティア、スーパー日本人というのも話題になっていたけど。日本人って “スーパー” って言葉を使うのが好きなんだよね、スーパーを使うことのできる定義のようなものって何かあるのかな? 」

ミレイ
「基本的には自由表現だけど、一般的なもの、普通のもの、昔からあるものより優れている対象に使われていることが多いわ。スーパー銭湯だったら、昔ながらの町の銭湯と比較して、規模が大きかったり、設備が充実している銭湯を指したり、スーパーカーは、普通の乗用車より速く走るってイメージよね。でも、この昔ながら~とか、普通の~という定義がはっきりしていないと、基準があいまいになって混乱してしまうこともあるのよ。」

グレオ
「そうだよね。ところで、雑穀でもあるの?スーパーアワとか、スーパーヒエとか、スーパー雑穀とか?」

ミレイ
「雑穀そのものの存在がスーパーなので、アワやヒエに、スーパーをつけて紹介することはまず見ないけど、少し前までは、スーパーフードのひとつとしてよく使われていたわ。今は、スーパー大麦を使った商品も見かけるよね。」

グレオ
「スーパーフードは、なんとなく使われ方わかるけど、スーパー大麦って何だろう?」

ミレイ
「スーパー大麦の定義は、私もよく聞かれるのよ。使用についての明確な基準や制限は特にないけど、一番有名なのは、オーストラリア産の “スーパー大麦 バーリーマックス” かな。一般的な大麦と比較して、食物繊維の含有量がとても多かったり、レジスタントスターチという、難消化性でんぷんを多く含んでいるの。他では、日本国内で生産されているもので、水溶性食物繊維のβ-グルカンが一般的な大麦より多く含まれているという理由で、“国産スーパー大麦使用”を謳っている商品も出ているわ。」

グレオ
「なるほど。」

ミレイ
「それで、この一般的な大麦が何を指しているのかなんだけど、よく比較対象にされるのは、麦ごはんに使われている押麦なの。でも、注意してほしいのは、食品成分表に掲載されている押麦の食物繊維量は、年月の経過と共に増えて変化しているのよ。この推移表を見てくれる?」


日本食品標準成分表における『大麦 (押麦) 』食物繊維総量の推移(g/100g)

グレオ
「ほんとうーだ。でも、なぜ変わってくるの?」

ミレイ
「大麦の品種改良はけっこう進んでいて、食物繊維量の多い品種も増えてきているの。食品成分表のデータは、実際に流通しているものから複数選んで測定しているんだけど、時代と共に大麦の栽培品種が変わり、食物繊維などの含有成分も変化してきたの。また、栄養学の発展で食物繊維に分類される範囲も変わってきているわ。さらに、食物繊維量の測定技術そのものも進歩しているので、より正確な値に近づいていると思われるのよ。」

グレオ
「そうなのか。対象となる一般的な、いわゆる普通の大麦の数値も変わってくるんだね。ということは、スーパー大麦といえる基準も変わってくるかもしれないね。」

ミレイ
「そのとおりよ。スーパーをつける明確な基準はないから、消費者が納得できる、明らかに優位な数値であれば使っても問題ないと思うわ。でも、対象となる比較データの最新情報のチェックは必須よね。」

グレオ
「そうかー、科学技術の進歩はすごいね。」

ミレイ
「最近では、普通のもち麦より水溶性食物繊維のβ‐グルカンを多く含む、スーパーもち麦という表現も出てきているわ。でも、食品成分表には、もち麦の数値は出てないけどね。」

グレオ
「これだけもち麦が有名になったら、そろそろ掲載されるかな?」

ミレイ
「昨年末発表された日本食品標準成分表(八訂)には、残念ながらもち麦としては掲載されていなかったの。今、流通しているもち麦はたくさんの種類があって、品種の違い、また同じ品種でも年や産地によって変動もあるみたいなので、まだ標準値は設定できないのかも知れないわ。」

グレオ
「そうなのかー。そういえば、思い出した! 冴えない中年のおじさんが、手作りのヒーロー・コスチュームに身を包んで、悪に立ち向かうアクションコメディー映画『スーパー!』。自分で決めれば、誰でもスーパーな存在になれるんだって思ったんだ。」


ミレイ
「その映画見たことないけど、どんな人にも、どんな雑穀にも、光ってる、スーパーな素質を持っているところがあるよね。何かと比較するのではなくて、栄養価と共に、おいしさ、食感など、雑穀それぞれの個性ある、いいところをもっと引き出して、おいしく食べたいよね!」

《解説》
マーケティング用語としても使用されることが多い “スーパー” の表示に関する明確な基準はないようです。雑穀そのものは、ひとつひとつがある意味スーパーな食材であるといえます。一般的なもの、普通のものと比較してその優位性を示す場合、常に新しい情報の収集、正しい表現方法が求められます。雑穀業界全体の健全な発展につなげていくため、より適した表現が広がるよう、関係機関と連携しながら取り組んでまいります。

参考資料
日本食品標準成分表,四訂(1982),五訂(1997),六訂(2010),七訂(2015),八訂(2020)

登場人物紹介
  グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞と食べること。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ミレイはカフェのバイト仲間。

  ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強く、負けず嫌い。

 

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