雑穀物語NEXT〚第18話〛 北の大地で作る雑穀への期待

この物語は、雑穀の魅力について正しく、わかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する信実のヒューマンドラマです。雑穀の有資格者を中心に、皆様から寄せられた雑穀にまつわる疑問についての答えを探していきます。


グレオ
「3月になって暖かくなったので、春休みにまた北海道に行きたいなあ。。」

ミレイ
「あれ、グレオくん、北海道に行ったことあるの?」

グレオ
「実は、北海道に高校時代の友だちがいて、毎年、遊びに行ってるよ。江別ってところにある大学に行ってるんだ。」

ミレイ
「江別の大学っていうと、ホームページで最初にお牛さんが登場している大学ね。いいわねー、楽しんできてね。お土産もよろしくね!」


グレオ
「よく知ってるね、OK! 料理好きなミレイちゃんへのお土産は、ジャガイモでいい(笑)?」

ミレイ
「えー、やっぱりチョコレート系がいいわ。北海道産のジャガイモは近所のお店でいっぱい売っているから。」

グレオ
そうだよね、了解、了解。ところで、ジャガイモの生産は北海道が一番だけど、雑穀も北海道が日本で一番なの? 」

ミレイ
「北海道のソバやマメ類は日本一の大産地だけど、キビ、アワ、ヒエのいわゆるミレットでいうと、統計上は岩手県が日本一の産地なの。」

グレオ
「統計上?」

ミレイ
「そう、発表されている統計ではね。日本全国の雑穀の栽培面積や生産量は、公益財団法人日本特産農作物種苗協会(特産種苗)さんが毎年調査しているのよ。昨年末に、令和元年度の栽培、生産面積の調査結果が掲載されて、岩手県が日本一だったわ。でも、もしかしたら、北海道が1番かも知れない。。」

グレオ
「もしかしてってどういう意味?」

ミレイ
「キビ、アワ、ヒエなどの雑穀について、特産種苗さんの集計には北海道だけが入っていないのよ。」

グレオ
「えー、なんで北海道だけ入ってないの? せっかくの調査なんだから、日本すべての都道府県のデータがあればいいのに。」

ミレイ
「そうなんだけど、北海道って、いろいろな作物が日本一でしょ。ジャガイモもそうだけど、コムギも日本全体の生産量の半分以上を占めてるの。北海道庁のホームページを見ると、北海道で雑穀というとソバのことが中心みたいで、キビ、アワ、ヒエなどは、残念ながら本当にマイナー作物の扱いなので、雑穀としても公表されていないのよ。」

グレオ
「ふーん、そういうことなのか。でも、広大な雑穀畑の中、でっかいトラクターやコンバインが動いて収穫してそうだけどね。」

ミレイ
「でも公表していないだけで、全く調べてないってことではないのよ。関係機関等で聞き取り調査した結果では、岩手県より多い年もあるみたいなの。」

グレオ
「なるほど、でも日本一の可能性があるのなら、公表すればいいのにね。何か理由があるの?」

ミレイ
「う~ん、それはね、北海道って、ひとりの農家さんが持っている畑の面積がとても広いの。もちろん、大型の農業機械を使っているし、ちょっとしたテスト栽培でも、5ヘクタールくらいになっちゃうらしいのよ。去年、キノアのテスト栽培をされていた畑の写真も見せてもらったけど、テストで作って5.5ヘクタールだって。はるか向こうの方まで、見えないくらいずっとキノアの穂が写っていたわ。」

グレオ
「東京ドームが4.7ヘクタールだから、まるまる東京ドーム全部を使って、テスト栽培するような感じだね。」

ミレイ
「そう、事業としての本格栽培だと、最低でも10ヘクタールから数10ヘクタールくらい作らないと、輪作体系で農地が回っていかないって、農家さんが言われていたわ。全体の雑穀栽培面積が小さい分、数軒の農家さんによる、テスト栽培と本格栽培の割合で全体への影響も大きく、また毎年異なるので、なかなか正確なデータとして発表しづらいんじゃないかなって思うの。」

グレオ
「本格栽培で東京ドーム何個分だろう!?、やっぱりスゴイね、でっかいどうだね。」

ミレイ
「また、北海道の場合は、各企業さんとの直接契約栽培が多く、表に出てこない産地もあって、全体を合わせると岩手県を超える面積、生産量になっていると推定されてるのよ。」


グレオ
「なるほど。北海道は、数字として見えないけれど、雑穀の栽培は広がっているということだね。」

ミレイ
「そうなんだけど、全体の動向が見えないので、課題もいろいろあるようなの。雑穀先進地の岩手県のように、種子の供給や管理体制が求められているし、規模が大きい分、需給バランスと生産の調整など、日本全体を見た健全な雑穀発展に向けて、今後、北海道はとても重要な位置づけになりそうなのよ。だから、生産状況の現状把握はやっぱり必要なの。」

グレオ
「そーなのか。」

ミレイ
「そう、面積と共に、期待も大きいわ。」

《解説》
国産雑穀の需要拡大とともに、北海道の雑穀生産者や企業、行政関係者等から、雑穀の生産や流通、市場動向に関する問い合わせも増えています。また、キノアなどは、広大な面積で安定して生産が可能なため、長期的な企業との取り組みも始まっています。北海道の生産、流通動向は、雑穀市場全体に大きな影響を持っているので、これからますます注目されていきそうです。

参考資料
公益財団法人日本特産農作物種苗協会『特産種苗』
北海道農政部『麦類・豆類・雑穀便覧』

登場人物紹介
  グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞と食べること。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ミレイはカフェのバイト仲間。

  ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強く、負けず嫌い。

 

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