雑穀物語NEXT〚第8話〛 “雑” が意味する価値と味わい

この物語は、古来から日本人の生活と密接に関わってきた、食の文化財ともいえる雑穀の価値と魅力について、正しくわかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する信実のヒューマンドラマです。雑穀エキスパート資格を持つ、雑穀が大好きなミレイとその友人グレオを中心に、様々なテーマで展開していきます。


グレオ
「雑巾、雑草、雑菌、雑用、雑木、スマホでも調べてみよう、ピコピコ、雑種、雑魚、雑炊、雑煮、、、」 

ミレイ
「なに、ぶつぶつ、念仏みたいのこと言ってるの?」

グレオ
「そうだ、雑念もあった! いや、ミレイちゃんって雑穀が好きじゃん。それで友達に雑穀のこと話したら、雑って字がダサい、って言われたので、雑の言葉って何があるのか考えてたの。全体的にイケてないね。」

ミレイ
「そんなこと、、ないよ。雑って言葉、ものすごく奥が深いの。」


グレオ
「えっ、どういうこと?」

ミレイ
「確かに、雑って、雑多なもの、その他大勢、みたいな使われ方をするけど、それだけではないの、違うのよ。」

グレオ
「どう違うの?」

ミレイ
「雑って、様々な、多様な価値、そして力強いものという意味があるのよ。例えば、雑草。雑草って刈っても刈っても、どんどん生えてくるでしょ。それもいろんな葉っぱの形をしたものや、人よりも草丈が高くなったり、じべたを這ったり、ビルのコンクリートの隙間から生えている雑草見たことない?」

グレオ
「あるある、どんな場所にも草が生えているね。」

ミレイ
「そうなの、農家さんにとっては、雑草を取り除くことが大変な作業だけど、都会の雑草を見るとその強さを実感できるよね。また、もうすぐお正月だけど、1月7日に食べる七草粥には、なずなやはこべらなど、邪気を払い万病を除くなど、季節の行事に密着してきた草もあるのよ。」


グレオ
「雑魚ってどう?あまり良い意味で使われないけど。」

ミレイ
「雑魚って名前の魚はいないけど、小さいアジやイワシ、サバ、ハゼやタナゴなど、まとめて雑魚って呼ばれているね。高級なお魚でよく聞く、マグロやスズキ、フグなどように、料亭の料理素材にはならないけれど、雑魚には、体内でほとんど作ることができない、健康に直結する必須脂肪酸のDHAやEPAもたくさん含まれているの。また、まるごといただくと、カルシウムも補給できるしね。」


グレオ
「雑菌は?」

ミレイ
「腸内細菌って知ってる?」

グレオ
「ヨーグルトに入っている、ビフィズス菌とか?」

ミレイ
「そう、私たちの腸の中には、数百種類、約100兆個もいるっていわれているの。乳酸菌やビフィズス菌は有名だけど、良いもの、悪いもの含めて、名前も知らない細菌がいっぱいいて、腸内フローラといって、集団を形成しながら住み着いているのよ。健康を維持するためにも、これらの細菌が良いバランスを保つことが重要で、腸内細菌と病気の関係は、最近ホットな研究テーマなのよ。また、お味噌やお酒を作るのも麹菌などの細菌が必要だし、私たちの皮膚にも常在細菌っていって、守ってくれる菌もあるの。雑菌というとすべてバイ菌のように思われるけど、そうじゃないのよ。」


グレオ
「へ~、なるほど、雑っていろいろすごいんだね。」

ミレイ
「私にとっての雑穀の原点ともいえる本があるの。神奈川県藤沢市の小学校の教員をされていた、名取弘文先生の公開授業が農文協さんで本になっているのよ。『雑』には愛がいっぱいっていうの。」

グレオ
「おもしろ学校授業、、何か面白そう。雑のデザインもすごいし。」

ミレイ
「”雑”には、良い意味で使われるもの、悪い意味で使われるものいろいろとあるけど、この時の授業には、様々な“雑”に対する愛がいっぱい詰まっているの。雑穀の授業をされているのは、あの有名な、雑穀博士の阪本寧男先生なのよ。雑菌の授業は、発酵学者の小泉武夫先生、また、雑魚や雑煮の授業も掲載されているの。」

グレオ
「へ~そうなんだ。それって最近の授業?」

ミレイ
「違うよ、約30年も前の授業のことよ。私が高校生のときに、偶然古本屋さんで見つけて読んでみたの。その内容にものすごく感激して、雑穀の魅力にはまって、栄養学や調理科学の世界を目指すきっかけにもなった本なの。」

グレオ
「ほー、ミレイちゃんも僕も生まれる前だね。」

ミレイ
「今読んでも新鮮に感じるし、もう雑はダサいなんて言ってほしくなくなるわよ。雑穀って、世界とつながっているんだって、こんなにも力があるんだって、雑には、たくさんの愛が詰まっているんだってことを感じることができるのよ。」

グレオ
「そうなのか!わかった。友達にも、雑穀という言葉の意味を話してみるよ。」

ミレイ
「グレオくん、雑穀っていう言葉には、力強い、そして多様な価値や味わいがあるってことを伝えてね!」

グレオ
「OK! よし、僕もこれからは、雑な男になる!」

ミレイ
「何か雑の使い方、違う気がするけど。。」

《解説》
雑穀の“雑”という言葉について、あまりいい名前でないので、もっとオシャレ感のある表現の方が良いのでは?という話を聞くことがあります。その度に、雑の持つ意味と共に、雑穀の価値を伝える大切さをお話しています。食品の分野におけるマーケティング視点の表現を用いた英名表記等を使うことで、新たな認知が広がるかもしれません。しかし、そのような表現は、一時的なブームとなることもあるようです。
生物多様性の象徴ともいえる雑穀は、日本、また世界の重要な遺伝資源でもあります。継続して雑穀を広めていくために、“雑”という言葉の意味を踏まえて、「雑穀」の本当の価値を大切に伝え続けていきたいと思います。

参考書籍
名取弘文 (1991)「おもしろ学校公開授業『雑』には愛がいっぱい」 農文協

登場人物紹介
  グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞と食べること。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ミレイはカフェのバイト仲間。

  ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強く、負けず嫌い。

 




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