雑穀物語NEXT〚第29話〛 大麦分類方法を正しく理解する


グレオ
「二条大麦、六条大麦、丸麦、はだか麦、もち麦、米粒麦、ビタバァレー、麦ごはん、麦とろごはん、牛タン塩焼き、、、、」

ミレイ
「グレオくん、なにブツブツ言ってるの?」


グレオ
「この間の大麦の分類方法、頭の中で整理しているんだけど、なかなか覚えきれなくて、、、どのような名前になって、僕のおなかに入るのか、流れを知りたくて。」

ミレイ
「そうね、頭の中だけで理解しようと思っても難しいわよ。図にしたので見てくれる?」


  大麦の分類と食品加工の流れ

グレオ
「おー、なるほど。大麦は、二条大麦と六条大麦に分けられて、それぞれ、皮麦、はだか麦があって、また、それぞれにもちとうるちがあって、それぞれが、精麦されて、味噌や焼酎の原料、麦ごはん、そして、牛タン定食になっていくのか。。。」

ミレイ
「そのとおりよ。それぞれの加工に適した種類や品種はあるからね。例えば、ビールの原料の多くは、二条大麦のうるち種ね。それで、ビールの原料になるので、ビール麦って言われたりしてるのよ。」

グレオ
「なるほど。あれっ、行政的な分け方では、確か、二条大麦、六条大麦、はだか麦ってなってたよね。それぞれが重なってるところも多くて集計難しくないのかな。どうしてこのように分かれているの? そもそも何で小麦はひとつで、大麦は3種類で分けられているの? 小麦の方がたくさん作られている気がするけど。」


ミレイ
「今日はその話よね。明治以降、国による作物の調査はされてきたわ。それで、現在行われている作物統計調査は、戦後の食糧難が続く、昭和22年に制度化されたものなのよ。食糧問題の解決は、当時とっても重要な政治課題だったの。そのために、日本の農業にとって重要な作物の生産に関する実態を数字で明らかにして、生産努力目標の策定や達成状況検証、経営所得安定対策の交付金算定、作物の生産振興への事業推進等の農業政策に活用されてきたのよ。」

グレオ
「へ~、そうなんだ。キビ、アワ、ヒエはないの?」

ミレイ
「昔は入っていたんだけど、残念ながら、今は対象になっていないわ。それで、作物統計では、麦類として、小麦と二条大麦、六条大麦、はだか麦で分けられて集計されていて、それを4麦っていうのよ。令和2年度産の統計によると、小麦の収穫量 95万トンに対して、二条大麦は 14.5万トン、六条大麦 5.7万トン、はだか麦 2万トンなの。大麦それぞれはダブって集計されていないので、大麦全体で22.2万トン。グレオくんのいうとおり、小麦の方が2.3倍以上も多いわ。」

グレオ
「やっぱりね。」

ミレイ
「それで、大麦が3つに分けられている理由だけど、こちらの推移を見てくれる?」


  小麦、大麦合計(二条大麦、六条大麦、はだか麦)国内収穫量の推移

グレオ
「あれっ、昔は、大麦の方が多かったんだね、びっくり!」

ミレイ
「そうなのよ。以前は大麦の方が作られていたのよ。戦後、学校給食のパンなどに使われた小麦や大麦の輸入が増えて、小麦、大麦共に収穫量が下がっているけど、大麦の方が大きく下がって逆転してしまったのよ。前回の東京オリンピック前、昭和35年当時と比べると、10分の1以下になってしまったわ。」

グレオ
「大麦、そーなのか。」

ミレイ
「それで、なんで大麦は3種に分けられたってことだけど、食糧問題の解決のための重要な統計なので、使われ方も考えて決められたと思うのよ。二条大麦はビールや焼酎、六条大麦は、麦ごはんやお茶、味噌などに使われることが多かったの。また、はだか麦は、四国地方などで麦味噌や麦ごはんに使われていたわ。それで、二条大麦、六条大麦、はだか麦って分け方になったのかなって。対策立てるためには集計方法の継続性も大事だから、収穫量が変わっても、そのままずっと今の分類方法で行われているのよ。」

グレオ
「そーか。食糧問題の解決に大麦って重要だったんだね。」

ミレイ
「小麦や大麦は、最も重要なお米の栽培を減らすことなく、裏作で作られるからね。また、小麦と大麦の呼び方って、穂や粒の大きさで呼んでいる名前ではないのよ。英名で小麦は wheat、大麦は barley といって、違う作物として名前が付いているの。」

グレオ
「へ~、smallmugi と bigmugi ではないんだね。」

ミレイ
「そうよ。小麦は醤油の原料でもあるけど、粉にしてパンや麺、お菓子に使われることが多いよね。それに比べて大麦は、粒や粉、焙煎、麦芽など様々な加工形態で、ビール、焼酎、お茶、味噌、ごはん、麺、パン、麦こがしなど、とっても用途が広いの。だから、日本での呼び方は、用途の小さい麦で小麦と、用途の大きい麦で大麦になったともいわれているのよ。」

グレオ
「そーなのか。ところで、この間のもち麦おにぎりの原料はどこに入っているの?」

ミレイ
「そう、もち麦は、もち麦としてひとつにまとめられてはいないのよ。もち麦のうち、二条皮麦が二条大麦、六条皮麦が六条大麦、二条であっても六条であってもはだか麦は、はだか麦として集計されているわ。」

 もち麦の品種名  分類  統計
くすもち二条 二条、皮麦 二条大麦
もち絹香 二条、皮麦 二条大麦
ホワイトファイバー 六条、皮麦 六条大麦
はねうまもち 六条、皮麦 六条大麦
ダイシモチ 六条、はだか麦 はだか麦
キラリモチ 二条、はだか麦 はだか麦
ワキシーファイバー 二条、はだか麦 はだか麦
もっちりぼし 二条、はだか麦 はだか麦
フクミファイバー 六条、はだか麦 はだか麦

グレオ
「ほー、二条も六条も、皮もはだかも、もち麦って、品種がたくさんあるんだね。」

ミレイ
「そうね、機能性成分量を増やし、また、もっと多く収穫できるようにって、日本の地域それぞれの気候に適した品種開発がどんどんされてきたのよ。」

グレオ
「なるほどね、大麦って、やっぱりいろいろ大きい麦ってことだね。」

ミレイ
「うん。それで、まとめると、大麦分類を正しく知って、いろいろな種類の大麦を、いろいろな用途でたくさんおいしく食べようねって話よ。これで、私の大麦分類の話はおしまいね。」

グレオ
「OK、わかった。もっといろんな種類のもち麦を食べて、もち麦おにぎりや、もち麦おかゆの用途として、もち麦も個別に統計調査されるようになるといいね。」

《解説》
日々寄せられる協会への問い合わせの中で、大麦の呼び方や分類方法については、上位の部類に入ります。大麦、またもち麦は、それだけ注目されていることといえます。作物として、最も古くから栽培されてきた大麦は、長く日本人の食と健康を支えてきました。大麦の歴史や、精麦加工、また使われ方など、正しく理解を深めると、さらに多くの方に伝えたくなることと思います。

参考サイト
全国精麦工業協同組合連合会
大麦食品推進協議会
総務省統計局『統計で見る日本/作物統計調査』

参考資料
農林水産省 (2021年2月)『麦の参考統計表』
農林水産省 (2021年2月)『麦の需給に関する見通し』
農林水産省 (2021年3月)『令和2年産4麦の収穫量』
農林水産省 (2021年3月)『麦をめぐる事情について (大麦・はだか麦) 』

参考書籍

渡邊好昭・藤田雅也・柳沢貴司編著 (2013)『麦の高品質多収技術-品種・加工適性と栽培-』農文協

紹介商品
はくばく『もち麦おかゆ』

登場人物紹介
  グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞と食べること。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ミレイはカフェのバイト仲間。

  ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強く、負けず嫌い。

 

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