雑穀物語NEXT〚第30話〛 古代米のロマンと軌跡と現実


この物語は、雑穀の魅力について正しく、わかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する信実のヒューマンドラマです。雑穀の有資格者を中心に、皆様から寄せられた雑穀にまつわる疑問についての答えを探していきます。


 


グレオ
「ミレイちゃん、農林水産省公認のYouTubeチャンネル、ばずまふって知ってる? 農林水産省職員の方々がユーチューバーとして、農林水産業の様々な話題について、楽しく、わかりやすく、おもしろく発信してるんだ。それで、これ、“衣食住院正子の部屋”っていう企画は風刺が効いてるんだけど、雑穀のことも話題にしてたよ。」

ミレイ
「へ~、どんな動画?」

グレオ
「平成生まれの古代米! だって。僕も平成生まれだけど、現代人だよ。でも、古代ってなんかロマンがあるよね。」

ミレイ
「ふむふむ、なるほど、古代米の呼び方のことね。農林水産省の方から見たら、つい最近育成された品種のお米が “古代米” って呼ばれていることがおかしいねって、この動画を作ったんだと思うわ。」


グレオ
「そっかー、古代米かー。古代って、すっごい昔のイメージがあるけど、いつぐらいのことをいうんだろう?」

ミレイ
「はっきりとした定義はないけど、世界史でいうと原始時代のあと、封建社会ができる中世の前まで、中国では、始皇帝から項羽と劉邦の時代あたりね。日本では、古墳時代のあとくらいから奈良時代、平安時代をいうことが多いみたいよ。」

グレオ
「なるほど “鎌倉殿の13人” の時代は、もう古代ではないんだね。ところで、日本で流通している黒米の多くは、インドネシア生まれで、平成7年に日本の白米と掛け合わせで品種改良されたものだって、衣食住院正子さまが言ってるよね、本当なの?」

ミレイ
「そのとおりよ。農研機構で育成された “朝紫” って品種ね。統計が取られていないので正確にはわからないけど、日本各地で最も多く栽培されている黒米と思うわ。これで全部ではないけど、国内で広く流通している、いわゆる “古代米” って呼ばれていることの多い、主な黒米、赤米の品種登録についてまとめたものを見てね。新しい品種って、育成してから登録されるまで、数年はかかるからね。また、黒米と紫黒米は、言い方が違うだけで、同じ黒い色をしたお米のことよ。」

品種名 種別 育成者 品種登録 由来等
黒米
朝紫 もち 東北農業試験場 1998年
(平成10年)
F6東糯396 (インドネシアバリ島在来種紫黒米)× ふくひびき (粳米) 
おくのむらさき うるち 東北農業試験場  2003年
(平成12年)
東北糯149号 (インドネシアバリ島在来紫黒米に由来) × ふくひびき (粳米)
さよむらさき もち 農研機構九州沖縄農業研究センター  2012年
(平成24年)
東北糯149号 (インドネシアバリ島在来紫黒米に由来) × ハクトモチ (糯米)
紫宝 もち 新潟県農業総合研究所  2004年
(平成16年)
わたぼうし (糯米) × 朝紫 (糯黒米)
きたのむらさき もち 北海道拓殖大学 2001年
(平成13年) 
フィリピン国際稲研究所黒米 HUNG TSAN × たんねもち (糯米)
赤米
ベニロマン うるち 九州農業試験場  1998年
(平成10年)
南海97号 (粳米) × 対馬赤米 (粳赤米)
紅染めもち もち 農研機構九州沖縄農業研究センター  2006年
(平成18年)
ひみこもち (糯米) × ベニロマン (粳赤米)
紅衣 うるち 農研機構東北農業研究センター  2005年
(平成17年)
〔ふくひびき (粳米) × A5/赤室 (粳赤米)〕× ふくひびき (粳米)
夕やけもち もち 東北農業試験場 2009年
(平成21年) 
たつこもち (糯米) x 紅衣 (粳赤米)
つくし赤もち もち 福岡県農業総合試験場 1999年
(平成11年)
サイワイモチ (糯米) × 対馬在来 (粳赤米)
あかおにもち もち 岡山県農業総合センター農業試験場  2005年
(平成17年)
総社赤米 (粳赤米) × サイワイモチ (糯米)

グレオ
「へ~、平成になってから増えたんだね。なんでだろう?」

ミレイ
「それはね、平成元年度から平成7年度まで農林水産省で実施された事業 “スーパーライス計画” のおかげなのよ。」

グレオ
「スーパーライスというと、スーパーで販売されるお米のこと?」

ミレイ
「違うわよ。新しい形質を持った優れたお米ってこと。戦後、お米の供給面での能力はとても向上したんだけど、お米の消費は、昭和40年以降どんどん減少してきていたの。そのため、多くの水田を減反せざるを得ない状況になったのよ。当時は、バブル経済の時代で、食生活の多様化に伴って、お米に求められることも食味だけでなく、品質や安全性など、いろいろと増えてきたの。形、色、香り、粘り、硬さなど、個性ある新しい品種のお米や、冷凍米飯などの加工利用米としての適性も求められるようになっていたわ。また、生産性の面でも、農家さんやお米事業者から、低コストでたくさん収穫できる超多収系統に対する要望もあったのよ。そこで、農林水産省として大規模な予算をかけて、お米の需要拡大のための新形質水田作物の開発、すなわち “スーパーライス計画” が実施されたの。」

グレオ
「そーなんだ。それで、そのスーパーライス計画で、黒米や赤米の新しい品種が育成されてきたんだね。他にはどんなお米ができたの?」

ミレイ
「低アミロース米や高アミロース米、巨大粒米や巨大胚米、香り米などがあるわ。低アミロース米のミルキークイーンが有名よね。」

グレオ
「なるほどね。それで、色の付いたお米って何がいいの?」

ミレイ
「有色米の色には、白いお米にはない、健康につながる栄養素が含まれているの。黒米はアントシアニン、赤米はタンニン、緑米はクロロフィルよ。」

グレオ
「そ-かー。でも、色の付いたお米って、昔からあったんだよね。」

ミレイ
「うん、そうよ。それまでも日本各地で、在来種として細々と作り続けられていたんだけど、倒れやすくて作りづらかったり、収穫量が悪かったり、何よりも美味しくなかったりして、あまり栽培されていなかったわ。また、有色米を栽培するときに、近くのおいしい銘柄米と交配してしまって、お米が高く売れなくなる可能性があるのよ。さらに、収穫や調整する時の機械もきれいに掃除したり、分けたりして使わないと普通のお米と混ざってしまうのよ。苦労して作っても安い価格だったり、美味しくないってなったら、農家さんも大変だからね。それで、雑穀が見直される中で、作りやすくて、収穫量が多く、栄養価も高くて美味しい有色米品種を育成しようって話になったのよ。」

グレオ
「なるほどね。ところで、そもそもなんだけど、黒米や赤米の色が付いているお米って、よく言われているけど、今の白いお米の元祖なの?」

ミレイ
「それについては、遺伝子が答えを導いてくれるわ。今は、遺伝子解析がとっても進歩して、イネの起源の科学的な解明がされてきているので、また今度、説明するね。」

グレオ
「遺伝子の世界へ向けて、古代、発進! だね~。」

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