食品情報に求められるものは、時代とともに変わっている

食品の商品パッケージや広告では、
「食物繊維はレタス○個分」
「鉄分はほうれん草○束分」
「白米の○倍の食物繊維」
といった栄養比較を目にすることがあります。
大きな差のある比較数字を見ると、その食品、商品には非常に多くの栄養成分が含まれているように感じます。
このような表現は、商品の栄養上の特徴を印象づける食品マーケティングの手法として広く利用されてきました。
しかし現在、食品情報を取り巻く環境は大きく変化しています。
今回は、雑穀を例に、これからの時代に求められる栄養情報の比較と表示について考えてみます。
比較する相手で、商品の印象は変わる
「食物繊維はレタス○個分」という表現は、一見すると分かりやすい正しい説明のように見えます。
しかし、なぜ比較対象としてレタスが選ばれているのでしょうか。
レタスは、多くの人が知っている身近な野菜であり、「○個分」という表現によって量をイメージしやすい食品です。
一方で、95%以上という水分を多く含む野菜であり、重量当たりで比較すると、食物繊維量の差を大きく見せることが可能になります。
そのため、レタスを比較対象にすることがよく見られました。
このように計算された数値が誤っているのではありません。
しかしながら、比較されているのは特定の栄養成分であり、食品全体の価値を比較しているわけではありません。
販売側の狙いでもありますが、消費者は数字から実際以上の印象を受ける可能性があります。
栄養比較には、前提となる条件がある
栄養成分を比較するときには、必ず前提となる条件があります。
例えば、
100グラム当たりか、通常の1食当たりか
生の状態か、乾燥した状態か
調理前か、調理後か
といった違いです。
雑穀では、「白米の○倍」という表現もよく使われます。
雑穀は白米より多くの栄養やミネラル、食物繊維を含むものがあり、穀物同士の比較としてはわかりやすいです。
しかし、食する場合は、違ってきます。
一般的な雑穀ごはんは、白米一合に大さじ一杯など、一定量の雑穀を加えて炊きます。
100グラム当たりの比較と、実際に茶碗一杯から摂取する栄養量とは意味が異なります。
そのため、比較数字だけでなく、
「どのような条件で比較したのか」
「実際に食べる量では、どの程度になるのか」
まで伝えることが、正しい情報提供につながります。
食品情報に求められるものは変わっている
かつては、限られたパッケージや広告の中で、商品の特徴を短く、印象的に伝えることが必要でした。
しかし現在は、消費者がインターネットやSNSを通じて、栄養成分や比較方法、表示の根拠を簡単に調べられる時代です。
「なぜ、この食品と比較しているのか」
「100グラム当たりなのか、1食当たりなのか」
「実際に食べる量では、どの程度になるのか」
といった疑問も、消費者自身が簡単に確かめられるようになりました。
そのため、数字の大きさだけを強調した表現は、比較の意図や条件が分かったときに、かえって商品や企業への信頼を損なう可能性があります。
食品情報に求められるものは、大きな数字で関心を引くことから、比較条件や根拠まで丁寧に伝えることへ時代とともに変わっています。
消費者が自ら情報を確かめられる時代だからこそ、正確さと誠実さが、これまで以上に求められています。
信頼される比較・表示とは
信頼されるためにはどのような比較や表示を心掛ければよいのでしょうか。
そのためには、次の3つが重要だと考えています。
① 比較条件を明確にする
100グラム当たりか、1食当たりか、生か調理後かなど、比較の前提条件を分かりやすく示します。
② 比較対象を適切に選ぶ
数字を大きく見せるためではなく、消費者が商品の特徴を正しく理解できる比較対象を選びます。
③ 実際の食べ方に置き換えて伝える
100グラム当たりの数値だけでなく、1食分や一般的な使用量では、どの程度の栄養成分を摂取できるのかを示します。
この3つを意識することで、栄養情報は、単に商品を目立たせるための数字ではなく、消費者が納得して選ぶための情報になります。
正しい比較・表示が、企業への信頼をつくる
企業が発信する栄養情報は、商品の魅力を伝えるための大切な情報です。
だからこそ、情報は目を引けばよいものではないのです。
比較条件や表示の根拠まで含めて誠実に伝えることが、雑穀の価値の正しい理解と消費者の安心につながります。
そして、その積み重ねは、商品への信頼だけでなく、企業そのものへの信頼にもつながります。
日本雑穀協会では、雑穀の価値を伝えるために、根拠に基づいた正確で分かりやすい情報発信を大切にしています。
情報が手軽に入手できる時代に求められるのは、消費者が納得して選べるための情報です。
その積み重ねこそが、雑穀市場全体の健全な発展につながると考えています。
関連情報:雑穀エキスパート講座/日本雑穀アワード/法人会員制度
執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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