現場で雑穀の価値を生み出す人材とは

社内教育では得られない学びで判断力を養う

雑穀は、原料そのものに多くの可能性を持つ素材です。
しかし、その可能性は、自然に広がっていくものではありません。

どのように商品に活かすのか。
どのような場面で提案するのか。
どのような言葉で伝えるのか。
どのような人に届けるのか。

そこには、必ず「人」の判断と工夫があります。
では、現場で雑穀の価値を生み出す人材とは、どのような人なのでしょうか。

なぜ、外部研修で雑穀を学ぶ必要があるのか

組織では、営業研修、管理職研修、専門スキル研修など、さまざまな研修を通じた人材育成の機会があります。

営業研修では、提案力や商談力を学びます。
管理職研修では、組織づくりや部下育成、マネジメントの考え方を学びます。
専門スキル研修では、それぞれの担当分野に必要な技術や知識を深めていきます。

いずれも、企業活動を進めるうえで大切な学びです。
一方で、雑穀を扱う企業や現場においては、もう一つ欠かせない学びがあります。

それは、「雑穀」という素材そのものを理解することです。
雑穀は、単なる原料名ではありません。

種類ごとの特徴、食味、食感、調理性、保管条件、栄養、食文化、産地背景、表示や表現上の注意点など、多くの要素を持つ素材です。

また、複数の組み合わせや加工方法、用途などによってさまざまな変化を見せてくれます。 その理解が浅いままでは、利用したり、説明したりする言葉が一般的なものにとどまり、価格や機能だけに偏りやすくなります。

反対に、雑穀について体系的に学んだ人材は、商品を見る視点が変わります。

なぜこの原料を使うのか。
どのような食べ方に向いているのか。
どのような場面で価値を伝えやすいのか。
どの表現であれば正しく、わかりやすく伝えられるのか。

こうした判断ができるようになることで、営業、商品開発、品質管理、販売促進、情報発信など、現場での提案力が高まります。
雑穀を学ぶことは、特定の知識を増やすことだけではありません。
自社の商品や取り組みの価値をより深く理解し、比較できるようになることで、現場で活かせる形に変えていくための学びです。

一般的な理解と、現場で活かせる理解は違う

雑穀は健康的なイメージがあるため、栄養や食物繊維、ミネラル、彩り、食感などの切り口で紹介されることが多い素材です。
そのため、マーケティングや販促の現場でも、比較的取り上げやすいテーマとして扱われることがあります。

しかし、一般的な栄養情報や素材の特徴を知っていることと、雑穀を現場で活かせることは、同じではありません。
たとえば、同じ雑穀であっても、品種、精白度、粒の大きさ、加熱方法、配合割合、使用する料理や商品形態によって、食味や食感、見た目、使いやすさは大きく変わります。

また、栄養や健康に関する表現には、法律や表示上の注意点もあります。
表面的な理解で紹介することにとどまったまま、市場や消費者の反応を見てしまうと、結果として「雑穀はまだ知られていない」「消費者に十分認知されていない」という結論で判断され、「雑穀は売れる素材ではない」とされてしまうことがあります。

しかし、雑穀の価値は、単に知られているかどうかだけで決まるものではありません。

どのような商品に活かすのか。
どのような食べ方として提案するのか。
どのような売場や場面で伝えるのか。
どのような言葉であれば、消費者にとって自分ごとになるのか。

こうした現場での判断があってこそ、雑穀の価値は具体的な商品や提案として伝わっていきます。

雑穀の価値は、一般論だけでは伝わりません。
だからこそ、雑穀を扱う現場では、基本的な知識に加えて、素材を理解し、商品や提案に落とし込むための専門的な学びが必要になります。

社内教育では得られない、外部研修の価値

企業における人材育成では、社内教育が重要であることは言うまでもありません。
自社の商品、製造工程、販売方針、品質管理、取引先への対応など、日々の業務に直結する知識や経験は、社内で積み重ねていく必要があります。

一方で、社内教育だけでは得にくい学びもあります。
それは、自社の枠を超えて、業界全体の流れや、素材の背景、他分野での活用事例、社会の関心の変化などを広く捉える視点です。

雑穀を扱う教育担当者の方々からも、
「社内教育だけでは、どうしても自社の商品や業務の範囲に学びが偏りやすい」
「外部研修に参加することで、社員が自社の仕事を別の視点から見直すきっかけになる」
という声をお聞きすることがあります。

自社で扱っている原料や商品だけを見ていると、その価値を十分に言葉にできなかったり、他の雑穀や市場全体の中での位置づけが見えにくくなったりすることがあります。
全体を見渡す視点から、雑穀の種類や特徴、歴史、食文化、栄養、調理、加工、表示、商品開発、情報発信などを体系的に学ぶことで、自社の商品や取り組みを、より広い視点から捉え直すことができます。

研修の価値は、単に知識を増やすことではありません。
日々の業務で当たり前になっていたことを見直し、自社の商品や提案の意味を再確認し、現場での判断力を高めることにあります。

知識を持っているだけでは、価値は生まれない時代

雑穀を扱ううえで必要な知識は多岐にわたります。
インターネットやAIで、必要な知識を簡単に得られる時代です。

しかし、知識を持っていることと、現場で価値を生み出せることは、必ずしも同じではありません。
大切なのは、学んだ知識を、目の前の課題に合わせて使えることです。

たとえば、商品開発の現場であれば、原料の特徴を理解したうえで、味、食感、色合い、価格、製造適性、保存性などを総合的に考える必要があります。
営業や販売の現場であれば、雑穀の良さを一方的に説明するだけではなく、取引先やお客様が何を求めているのかを理解し、伝わる言葉に変えていく力が求められます。

品質管理や表示に関わる現場であれば、商品の魅力を伝える表現と、適切な表示・説明とのバランスを判断する力が必要になります。
つまり、現場で必要とされるのは、知識を「覚えている人」ではなく、知識を「判断に使える人」です。

伝える力も、現場で価値を生み出す力である

雑穀に関わる仕事では、「伝える力」も欠かせません。
どれだけ良い商品であっても、その価値が伝わらなければ、選ばれる理由にはなりません。

ただし、ここで大切なのは、過剰に魅力を強調することではありません。
雑穀の価値を、正しく、わかりやすく、相手に合わせて伝えることです。

専門的な知識をそのまま並べるのではなく、売場であれば売場の言葉に、食卓であれば食卓の言葉に、地域活動であれば地域の人に伝わる言葉に変えていく。
その翻訳のような役割を担える人がいることで、雑穀はより多くの場面で活かされていきます。

また、伝える力には、表現の適切さを判断する力も含まれます。
健康や栄養に関する表現、産地や原料に関する表現、商品の特徴を伝える表現には、正確さと慎重さが必要です。

雑穀の価値を広げるためには、魅力を伝える力と同時に、信頼を守る力も求められます。

学び続ける姿勢が、現場の力になる

雑穀を取り巻く環境は、時代と共に変化しています。
健康志向、主食の多様化、国産原料への関心、地域資源の活用、食文化への見直しなど、雑穀が関わるテーマは広がっています。

一方で、市場の変化、価格、原料確保、表示、消費者への伝え方など、現場で考えるべき課題も増えています。
だからこそ、一度学んで終わりではなく、学び続ける姿勢が大切になります。

知識を更新し、現場で試し、結果を振り返り、次の判断につなげていく。
その積み重ねが、雑穀の価値を一過性の流行ではなく、継続した商品や活動、事業へと育てていきます。

雑穀の価値を生み出すのは、原料だけでも、制度だけでも、情報だけでもありません。
それらを現場で活かし、人に伝わる形に変えていく人の力です。

これからの雑穀の広がりは、そのような人材が、それぞれの現場でどれだけ育っていくかにかかっています。

 

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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