想いを、企画・商品・事業展開へ

雑穀は、健康的な食生活、地域農業、食文化、環境への適応力など、さまざまな価値を持つ食材です。
雑穀への関心も広がっています。
一方で、これまで多くの雑穀に関わる事業者の取り組みを見てきた中で、理念や想いが強くても、事業として継続できなかった例も少なくありません。
そうした想いは、雑穀の普及にとって大切な原動力です。
しかし、想いや理念だけで事業を継続していくことは簡単ではありません。
その理由は、雑穀そのものに価値がないからではありません。
むしろ、雑穀には多面的な価値があります。
だからこそ、その価値を一時的な取り組みで終わらせず、継続できる活動や事業につなげていくための視点が必要です。
「良いものだから売れる」とは限らない
雑穀に関わる活動は、多くの場合、強い想いや理念から始まります。
「体に良いから広めたい」
「地域に残る雑穀を守りたい」
「多くの人に雑穀のおいしさを知ってほしい」
こうした想いは、とても大切です。
しかし、事業として継続していくためには、想いや理念を、商品やサービスとして伝わる形に整えていく必要があります。
消費者にとっては、
「なぜ今、この商品を選ぶのか」
「価格に見合う価値があるのか」
「食べ続ける理由があるのか」
が見えなければ、購入や継続にはつながりにくくなります。
また、事業者にとっては、安定した原料確保、商品としての差別化、利益を残せる価格設計が重要になります。
雑穀の価値を伝えることと、事業として成立させることは、似ているようで異なります。
この違いを理解することが、継続できる雑穀事業の出発点になります。
雑穀単体では、収益構造をつくりにくい
雑穀は、多くの場合、主食や副素材、ブレンド原料、加工食品の一部として利用されます。
そのため、個別の雑穀だけで大きな売上をつくるには難しさがあります。
また、一般的な主食用の穀物と比べて、割高に感じられることもあります。
雑穀は種類が多く、それぞれに食感、色、香り、調理特性が異なります。
この多様性は雑穀の魅力である一方、商品化や説明には一定の知識が必要です。
ここは、一般的な食品マーケティングだけでは見落とされやすい点でもあります。
地域産品の開発や販路拡大では、外部の支援を受けながら進められることもあります。
こうした支援は、商品づくりや情報発信を進めるうえで大切な機会になります。
しかし、雑穀の場合は、素材ごとの特性、原料の安定性、調理方法、地域に根ざした背景、継続購入につながる使い方まで踏まえなければ、一時的な商品化や話題づくりで終わってしまう場合があります。
だからこそ、雑穀の価値を事業につなげるには、一般的なマーケティングの視点に加えて、雑穀という素材ならではの専門性が必要になります。
見せ方が、価値の伝わり方を変える
雑穀は、売場やサイトでの見せ方によって、受け止められ方が変わります。
どのような言葉で、どのような利用場面とともに提案するか。
それによって、雑穀の価値は大きく変わります。
たとえば、単に「健康に良い雑穀」として伝えるのか。
「毎日のごはんをおいしく彩る素材」として提案するのか。
「地域の農業や食文化を支える商品」として伝えるのか。
同じ雑穀でも、伝え方によって消費者の受け止め方は変わります。
知識を伝えるだけでなく、
「選びたくなる理由」
「使ってみたくなる場面」
「続けたくなる価値」
を示すことが重要です。
継続できる事業には、周辺展開がある
雑穀を活用して成果を上げている事業者や企業を見ると、雑穀を単独の商品として捉えるだけでなく、周辺分野へ展開している例が多く見られます。
雑穀には、食感、彩り、栄養、地域性、物語性、加工適性など、さまざまな切り口があります。
その切り口を活かせば、雑穀は単なる穀物商品にとどまらず、新しい商品企画やサービスの出発点になります。
雑穀は、ブレンド一つで、原材料の選定一つで、商品の印象が変わる素材です。
つまり、雑穀事業を継続させるには、雑穀をどう売るかだけでなく、雑穀からどの分野に、何を広げていくかを考えることが必要です。
商品は、買われて終わりではありません。
食べられ、続けられ、また選ばれてこそ、事業としての継続性が生まれます。
そのためには、原料価格、加工費、包装、物流、販売手数料、販促費などを含めて、継続可能な価格設計を行うことも欠かせません。
おわりに
雑穀は、価値のある素材です。
しかし、価値があることと、事業として続くことは同じではありません。
雑穀を継続的な活動や収益につなげるためには、素材の魅力を伝えるだけでなく、商品設計、売場提案、利用場面、価格、販路、情報発信、周辺展開まで含めて考える必要があります。
日本雑穀協会では、これまで20年以上にわたり、100回を超える講座運営を通じて3,000名を超える認定者を輩出してきました。
また、日本雑穀アワード制度による1,000商品を超える商品審査、会員活動、産地や企業との連携を通じて、雑穀の価値をどのように社会や市場に活かしていくかを考えてきました。
その中で、理念や雑穀への想いが強くても、事業として継続できなかった例も見てきました。
だからこそ、雑穀を「良い素材」として伝えるだけでなく、継続できる活動や収益につなげるための実践的な視点を、今後さらに発信していく必要があると考えています。
雑穀を、良い素材で終わらせない。
雑穀を、続く活動へ。
雑穀を、広がる事業へ。
そのための実践知を、これからもお伝えしていきます。
関連情報:雑穀エキスパート講座/日本雑穀アワード/法人会員制度
執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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