限られたものを、より活かす

希少な国産雑穀とブレンド価値の向上

ステンレス製のブレンド機の中で、色とりどりの雑穀が回転しながら混ざっている様子を背景に、「限られたものを、より活かす」「希少な国産雑穀とブレンド価値の向上」「希少だからこそ、どう活かすか」と配置したアイキャッチ画像。

米も、「ブレンド」を設計する時代になっています。

「ブレンド米」というと、複数の品種や産地、異なる生産年の米を混ぜたもの。
かつては、価格を調整するための方法という印象を持たれることもありました。 しかし今、その価値を改めて見直す動きが生まれています。

東京都米穀小売商業組合では、「ブレンドマエストロ認定事業」を展開し、2026年7月には第1回認定講座が実施されました。

味、香り、食感、調理適性などを考えながら、異なる米を組み合わせ、目的に合ったおいしさをつくる。
単に「混ぜる」のではなく「組み合わせを設計する」という考え方です。

では、雑穀はどうでしょうか。

雑穀は、もともとブレンドと相性がいい

アワ、キビ、ヒエ、タカキビ、黒米、赤米、大麦、ハトムギ。
雑穀には、それぞれ異なる色や香り、食感、粘り、粒の大きさがあります。

現在、雑穀の代表的な商品の一つが、複数の穀物を組み合わせた「雑穀ブレンド」です。
十穀、十六穀、二十五穀など、多くの種類を組み合わせた商品も販売されています。

大切なのは、何種類入っているかではなく、「なぜ、その雑穀を組み合わせるのか」ということです。

国産雑穀は、限られた原料

国産雑穀は、米や小麦などと比べて生産規模が小さく、産地や生産者も限られています。
また、農産物である以上、毎年同じ量を安定して確保できるとは限りません。

天候によって収量が変わることもあれば、生産者や栽培面積の減少によって、これまで使ってきた原料が手に入りにくくなることも考えられます。

これから商品づくりを続けていくためには、「今、この原料があるか」だけではなく、「この先も、この原料を使い続けられるか」という視点が、ますます重要になっていきます。

希少だから使わない、ではなく

原料が少なくなれば、「貴重だから、できるだけ使わない方がよい」と考えることもあるかもしれません。

しかし、使われなくなれば需要も生まれず、生産を続けることも難しくなります。
だからこそ、「希少だから使わない」のではなく、「希少だからこそ、どう活かすか」を考える。
この視点が大切ではないでしょうか。

たくさん使うことだけが、原料を活かすことではありません。

少ない量でも、その雑穀ならではの色、香り、食感、風味を活かし、おいしさにつなげる。
そのような使い方もあります。

「どれだけ入れるか」から、「どんな役割を持たせるか」へ

黒米には特徴的な色があります。
もちきびには、やわらかな食感や甘み、粘りがあります。
大麦には粒感があり、タカキビやハトムギにも、それぞれ異なる風味や食感があります。

それぞれの特徴を理解すれば、大量に使わなくても、その個性を活かすことができます。

大切なのは、「どれだけ入っているか」ではなく、「なぜ入っているか」。

それぞれの雑穀に役割を持たせ、その役割が感じられるように組み合わせる。
それが、これからの雑穀ブレンドに求められる考え方の一つだと思います。

個々の特性を見つけ、活かす

「限られたものを、より活かす」という考え方は、商品づくりだけのものではありません。

農林水産省の戦略的国際共同研究では、インドとの共同研究として、「雑穀ゲノム育種技術と安定生産技術の確立」が進められています。

この研究では、アワの遺伝資源100系統について全ゲノム解析を行い、アワいもち病への抵抗性や、機能性成分であるルテイン含有量に関係する遺伝子の探索が行われています。

さらに、キビやソルガムについても有用な遺伝子を明らかにするとともに、多収性、難脱粒性、短稈・強稈、良食味、加工適性など、日本の雑穀育種に有用な形質を持つ系統を選定し、育種利用に向けた遺伝資源の特性把握を進めています。

興味深いのは、単に「生産量を増やす」だけではなく、多様な遺伝資源の中から、それぞれが持つ病害への強さ、収量性、食味、加工適性などを見つけ、その特徴を活かそうとしていることです。

雑穀をひとまとめに見るのではなく、それぞれの違いに価値を見いだす。
これは、ブレンドにも通じる考え方です。

限られた原料だからこそ、その特徴をよく知り、どこで、どのように活かせるのかを考える。
生産の現場でも、商品づくりの現場でも、これからますます重要になる視点ではないでしょうか。

ブレンドは、限られたものを活かす知恵

雑穀ブレンドは、何かの原料が足りないときに、別のものを加えて補うだけのものではありません。

どんな味にしたいのか。
どんな食感にしたいのか。
どんな風味にしたいのか。

その目的を考えながら、それぞれの穀物が持つ特徴を組み合わせていく。

つまり、原料を混ぜるのではなく、それぞれの個性を活かす。
そこに、雑穀ブレンドの価値があります。

国産雑穀の生産を増やし、生産者や産地を支えていくことは、もちろん重要です。
それと同時に、今ある原料の特徴を知り、それぞれに役割を持たせ、組み合わせの中で価値を引き出していく。

それもまた、国産雑穀を未来につなぐ方法の一つではないでしょうか。

だからこそ、「希少だから使わない」のではなく、「希少だからこそ、どう活かすか」を考える。

これからの雑穀ブレンドには、そんな役割も期待できるのではないでしょうか。

 

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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