米余り・米不足の議論だけでは見えない、主食構造の変化

日本人の食卓はいま、どのように変わっているのか

米、雑穀、パン、おにぎり、パスタ、うどんと比較用プラカードで、主食の多様化を表現したブログ記事アイキャッチ画像

最近、「米余り」を懸念するニュースを見かける機会が増えています。

少し前まで、店頭で米が手に入りにくい、価格が高いといった「米不足」が大きく報じられていました。それが今度は、流通段階の在庫を背景に、「米余り」を懸念する報道も見られるようになりました。

短い期間のうちに、米不足から米余りへ。

こうした変化を見ると、米の生産量や在庫、価格だけに目が向きがちです。しかし、その背景では、日本人が主食を選び、購入し、食べる場面そのものが変化している可能性があります。

そこで、米が足りるか、余るかという議論だけでは見えにくい、現在の主食構造について考えます。

米穀関係者による、需給が緩むとの見方

公益社団法人米穀安定供給確保支援機構(米穀機構)は、米の生産、集荷、卸売、小売などに関わる事業者を対象に、米の需給や価格について毎月調査しています。
2026年6月の調査では、今後3か月の主食用米について、需給は緩み、価格は現在より低くなると見る回答が多い状態です。

もちろん、米余りや価格下落が確定したわけではありません。天候や作柄、流通在庫、消費者の購買行動によって、状況は変わる可能性があります。
それでも、米穀関係者の回答にこうした傾向が表れていることは、主食市場の変化を考えるうえで重要な動きです。

米の約3分の1は、中食・外食を通じて食べられている

主食の変化を考える際には、米がどのような形で食べられているのかにも目を向ける必要があります。
米穀機構が行った2026年5月の調査によると、米の消費のうち、家庭内が約67%、中食と外食が合わせて約33%でした。

つまり、米の約3分の1は、弁当やおにぎり、外食メニューなど、中食・外食を通じて食べられています。
米の消費というと、家庭で炊いたご飯を思い浮かべやすいかもしれません。しかし実際には、コンビニのおにぎり、スーパーの弁当、外食の定食や丼物、冷凍米飯、パックご飯など、さまざまな形で米が食べられています。

これからの米の需要を考えるには、家庭で購入される量だけでなく、中食や外食で、どのような米料理が選ばれているかを見ることも重要です。

一日の中でも、主食は使い分けられている

現代の食卓では、一日三食、同じ主食を食べるとは限りません。
朝は食パンやシリアル、昼はそばやパスタ、調理パン、コンビニのおにぎりや弁当、夜は家庭で炊いたご飯というように、生活時間や食べる場所に合わせて主食が使い分けられています。
パックご飯、冷凍米飯、冷凍麺、宅配食など、家庭で一から炊飯や調理をしなくても食べられる選択肢も増えました。

食品メーカーや中食、外食産業も、こうした変化に合わせて、簡便性や食べ切りやすさ、新しい味わいを意識した商品やメニューを提案しています。

主食市場では、米、パン、麺などを、生活場面に応じて使い分ける傾向が、より明確になっていると考えられます。

米の価格が下がれば、食習慣は元に戻るのか

「令和のコメ騒動」とも言われた米不足と価格高騰は、多くの消費者が日々の主食を見直すきっかけになりました。

価格上昇を受けて、パンや麺類を食べる機会を増やした家庭や、米を購入する量や頻度を見直した家庭もあったと考えられます。また、米に麦や雑穀を加えるなど、主食の食べ方を工夫した家庭もあったかもしれません。

ここで重要なのは、価格だけではありません。
一度、新しい商品を購入し、その便利さやおいしさを知ると、それが日常の選択肢として残ることがあります。米の価格が下がったからといって、食習慣がすぐに以前の状態へ戻るとは限りません。

そのため、「価格が戻れば、米の消費も自然に戻る」と考えるだけでは十分ではなく、米をどのような場面で、どのような商品や料理として食べてもらうのかを考える必要があります。
簡便性、おいしさ、食感、楽しさ、健康への関心、地域性など、現代の暮らしに合った主食の価値を改めて提案していくことが求められます。

主食の変化は、「米を食べなくなること」だけではない

主食構造の変化を、パンや麺類への移行や「米離れ」だけで捉えることはできません。
近年は、インドをはじめとする南アジア地域の米料理、ビリヤニを専門店以外でも目にするようになりました。

2026年5月には、ファミリーレストランのデニーズで、南インド料理店「エリックサウス」監修による、バスマティライスを使ったチキンビリヤニの提供が始まり、現在もメニューとして展開されています。
これは、日本の米料理の選択肢が広がっている一例といえるでしょう。

国産の短粒米を炊いて食べるだけでなく、料理に合わせて長粒米を選び、スパイスや食材との組み合わせを楽しむ。米の価値が失われているのではなく、米の種類や調理方法への関心が広がっているのです。

主食の変化は、米から別の食品へ移る一方向の動きではなく、米の中でも種類や食べ方が多様になる動きとして捉えることができます。

多様化する主食市場で、雑穀が加えられる価値

主食の選択肢が広がる中で、雑穀の役割も変化しています。

現在、雑穀は雑穀ごはんだけでなく、パン、麺、シリアル、惣菜、スープなど、さまざまな食品に活用されています。
食感や彩り、味わい、栄養面の特長、産地や地域にまつわる物語など、雑穀には商品や料理に新たな価値を加えられる要素があります。

雑穀は、多様化する主食市場の中で、消費者の選択肢と食べる楽しさを広げる存在です。その可能性を、現代の暮らしに合った商品や料理に生かしていくことが大切です。

「米か雑穀か」という二者択一ではありません。
米、麦、雑穀など、それぞれの特長を生かし、食べる場面に合った商品や料理をつくることが、主食市場全体の価値を高めることにつながります。

米を中心とした主食文化を、次の時代へ

日本の食文化において、米は長く主食の中心を担ってきました。その大切さは、主食の選択肢が増えた現在も変わりません。
一方で、人口構成、世帯人数、働き方、調理時間、購入場所などが変化する中、米の届け方や食べ方も、暮らしに合わせて変わっていく必要があります。

米不足か、米余りかという目の前の需給だけでなく、その先にある食習慣や主食市場の変化を見ること。
そして、米を中心とした日本の主食文化を大切にしながら、麦や雑穀を含む多様な穀物の特長を生かし、新しい商品や食べ方を提案していくこと。

そこに、これからの主食市場を考える重要な視点があります。
多様な穀物を生かした商品や食べ方が、日々の暮らしの中で繰り返し選ばれることによって、新しい食文化が育っていきます。

日本雑穀協会では、雑穀の健全な普及を通じて、豊かな食文化の創造に取り組んでいます。
米を中心とした日本の主食文化を大切にしながら、多様な穀物の可能性を生かし、商品開発、人材育成、情報発信などを通じて、これからの食卓に新たな価値を提案していきます。

 

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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