雑穀を“売る商品”から“事業の起点”へ変える

継続できる展開を生み出すために

雑穀を使った商品や活動は、これまで多くの地域、企業、店舗、個人の取り組みとして生まれてきました。
雑穀ごはん、雑穀ブレンド、雑穀入りパン、菓子、惣菜、地域特産品、料理教室、イベント、食育活動など、雑穀の活かし方はさまざまです。

一方で、雑穀を使った商品をつくったものの、販売が一時的で終わってしまう。
イベントでは関心を持たれても、その後の継続的な展開につながらない。
地域資源として取り上げられても、事業として広がりにくい。

そうした課題も少なくありません。

雑穀の価値を継続的な活動や事業につなげるためには、雑穀を単に「売る商品」として見るだけでなく、事業を組み立てるための“起点”として捉えることが大切です。

雑穀を「売って終わり」にしない

雑穀商品をつくることは、大切な第一歩です。

しかし、商品化しただけで、自然に事業が続くわけではありません。
どれだけ価値のある素材であっても、収益の仕組みがなければ継続できません。
どれだけ思いを込めた商品であっても、販売先や伝え方が整理されていなければ広がりません。
どれだけ良い取り組みであっても、関わる人や体制が整っていなければ続けることは難しくなります。

大切なのは、雑穀を使って「何を売るか」だけでなく、そこからどのような事業構造をつくるかです。

商品販売にとどめるのか、講座や体験につなげるのか、飲食店メニューや地域ブランドと連携するのか、法人向けの商品開発や販促支援につなげるのか。
雑穀を入口として、どのような収益や関係を生み出していくのかを考えることが重要です。

商品化の先に、継続する仕組みを考える

先日、地域資源を活かした商品開発について、示唆に富む事例に接する機会がありました。

・地域に伝わる食文化や歴史的背景をもとに、専門家の知見を加えて商品化する。
・パッケージやデザインを整え、初期の広報や販売機会まで用意する。
・イベントや地域の発表会で紹介され、新聞やWebメディアに取り上げられる。

こうした段階まで進んだ商品であっても、その後に継続して販売され、事業として育っていくとは限らないということです。

・支援期間が終わると、商品を紹介してくれる場が減る。
・広報を担っていた外部人材が離れる。
・販売ページの更新が止まる。
・店舗やECでの販売導線が弱くなる。
・在庫管理や追加製造の判断が難しくなる。
・誰が責任を持ってPRを続けるのかが曖昧になる。

その結果、せっかく地域性や物語性のある商品であっても、次第に販売機会が減り、継続的に届けることが難しくなってしまうことがあります。
これは、商品そのものの魅力がなかったということではありません。
商品をつくることと、事業として続けることは別の課題だということです。

この事例を通じて、雑穀を活かした商品や活動においても、商品化そのものをゴールにしてはいけないと改めて感じました。

大切なのは、商品開発の段階から、完成後の運営まで考えておくことです。

・誰が売り続けるのか。
・誰が情報を発信し続けるのか。
・どの販路で届けるのか。
・どのタイミングで追加製造するのか。
・売上や利益をどう確認するのか。
・どのように次の商品や活動につなげるのか。

ここまで設計されてはじめて、商品は一時的な成果ではなく、事業の起点になります。

雑穀は、事業の起点になり得る素材である

雑穀には、食感、彩り、香ばしさ、栄養、地域性、食文化、希少性など、さまざまな切り口があります。
そのため、食品メーカーにとっては商品開発の素材となり、飲食店にとってはメニューの個性づくりに、地域にとっては農産物や食文化を伝える資源になります。
また、講座、レシピ提案、売場づくり、イベント、情報発信などにも広げることができます。
ただし、可能性があることと、事業として成立することは別です。

雑穀を事業として考えるには、誰に価値を届けるのか、何を提供するのか、どこで収益を生み出すのか、誰と組んで続けるのかを整理する必要があります。

原料を安定して確保できるか。
加工や包装を継続できるか。
販売価格に無理がないか。
利益が残る仕組みになっているか。
関わる人に負担が偏っていないか。

こうした視点がなければ、どれだけ良い取り組みでも長続きしにくくなります。

日本雑穀協会では、資格講座、日本雑穀アワード、会員活動、産地や企業との連携などを通じて、多くの雑穀商品や取り組みに関わってきました。
その中で感じているのは、雑穀の可能性は、商品そのものだけにあるのではないということです。

雑穀を通じて、人が学び、商品が生まれ、売場やメニューが変わり、地域の価値が見直され、生産者、事業者、消費者がつながっていく。
こうした広がりが生まれたとき、雑穀は単なる素材を超えて、継続的な活動や事業の中心になります。

おわりに

雑穀は、価値のある素材です。
しかし、雑穀を「良い素材」として伝えるだけでは、事業として続かない場合があります。

雑穀を、売って終わりにしない。
雑穀から、次の展開を生み出す。

そのためには、商品、販路、価格、収益、体制、連携を一体で考えることが大切です。

日本雑穀協会では、これまでの講座運営、商品評価、会員活動、産地や企業との連携を通じて得てきた知見をもとに、雑穀の価値を具体的な活動や事業につなげるための情報発信を進めてまいります。

今後は、雑穀ブレンド、商品企画など、より具体的なテーマについても整理し、雑穀を継続できる事業につなげる視点をお伝えしていきます。

 

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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