加工食品だからこそ伝えられる、雑穀の魅力

現在、日本雑穀協会では、「日本雑穀アワード デイリー食品部門〈2026・秋〉」の応募を受け付けています。
対象となるのは、おにぎり、パン、弁当、惣菜、サラダ、スイーツなど、日常の中で比較的身近に購入される雑穀食品です。
日本雑穀アワードでは、雑穀に関する専門的な知識を持つ審査員が商品を実際に試食し、「おいしさ」を基本として、雑穀の特徴や魅力が商品にどのように活かされているかを評価します。
では、なぜ雑穀にとって、こうした加工食品が大切なのでしょうか。
その理由を考えるうえで、まず知っておきたいのが、「雑穀のおいしさ ≠ 新鮮さ」ということです。
採れたてだからおいしいとは限らない
きゅうりやトマトなどの野菜、りんごや桃などの果物では、「採れたて」「新鮮」という言葉が、そのまま魅力につながることがあります。
お米にも「新米」という、収穫した年ならではの価値があります。
一方、雑穀は少し性格が異なります。
必ずしも「収穫したてだからおいしい」「新穀だから良い」と一概に言えるものではありません。
収穫後には適切な乾燥や調製が必要であり、その後の保管環境も品質を左右します。
収穫から一定の期間が経過した雑穀であっても、適切に管理され、良好な品質が保たれていれば、食品原料として十分に活用できます。
雑穀にとって大切なのは、単純な「新しさ」ではなく、収穫後から利用されるまで、適切に品質が守られていることです。
加工食品が、雑穀との出会いをつくる
雑穀にはもう一つ、大きな特徴があります。
家庭で日常的に調理する機会が、それほど多くない穀物であるということです。
もちきび、もちあわ、ひえ、たかきび、はとむぎ、キヌアなど、それぞれに特徴がありますが、
「どうやって炊くのだろう」
「どんな料理に合うのだろう」
と迷う人も少なくないでしょう。
だからこそ、加工食品が大切な入口になります。
パン、おにぎり、弁当、惣菜、サラダ、スイーツなど、普段から食べている食品の中に雑穀が使われていれば、特別な知識や調理の手間がなくても、自然に雑穀を味わうことができます。
そこで、
「この食感、おもしろい」
「雑穀っておいしい」
「こんな食べ方もできるんだ」
という発見が生まれます。
加工食品には、雑穀の魅力を「おいしい」という体験に変えて届ける役割があります。
一度の食経験が、雑穀全体の印象になる
きゅうりやトマト、りんごやみかんのように、多くの人が味をよく知っている野菜や果物では、一度おいしくないものに出会っても、
「トマトはおいしくない」ではなく、
「このトマトはおいしくなかった」と受け止めることができます。
それだけ、私たちの中に食経験が蓄積されているからです。
しかし、雑穀は事情が異なります。
食べたり調理したりする機会が少ないため、最初に出会った雑穀食品がおいしくなければ、
「この商品がおいしくなかった」ではなく、
「雑穀っておいしくない」という印象につながってしまうことがあります。
逆に、おいしい雑穀食品との出会いは、
「また食べたい」
「ほかの雑穀も食べてみたい」
という次の関心につながります。
一つの商品が、その人にとっての雑穀の第一印象になることもあるのです。
雑穀食品をつくるという責任
だからこそ、雑穀を使った加工食品をつくることには、大きな責任があると考えています。
その食品を通じて、消費者が初めて雑穀に出会うかもしれません。
その一口が、その人にとっての「雑穀の味」になるかもしれない。
「雑穀を入れたからよい」
「健康的なイメージがあるからよい」
というだけではなく、食品として「おいしい」「また食べたい」と思ってもらえるものに仕上げる。
そこには、雑穀食品をつくる側の誠実さと責任があります。
「雑穀が入っている」だけではない
雑穀には、粒の大きさ、食感、香り、色、加熱したときの変化など、それぞれに異なる特徴があります。
どの雑穀を、どのくらい使い、どのように加工・調理するのか。
その組み合わせによって、食品のおいしさは大きく変わります。
大切なのは、単に雑穀が入っていることではありません。
食品全体としておいしく、その中で雑穀の特徴が自然に活かされていることです。
加工は、雑穀の価値を失わせるものではなく、その特徴を多くの人に伝わる形へ変えていく方法にもなります。
加工食品は、雑穀の魅力を伝える「出口」
雑穀の普及を考えるとき、生産することだけでなく、最終的にどのような食品として消費者に届くのかという「出口」も重要です。
魅力ある商品が生まれる。
消費者が食べる。
「おいしかったから、また買いたい」と思う。
その積み重ねが、雑穀への関心を高め、原料需要にもつながっていきます。
家庭で日常的に調理する機会が少ない穀物だからこそ、加工食品は、雑穀の魅力を社会に届ける重要な「出口」といえます。
雑穀のおいしさ ≠ 新鮮さ
雑穀のおいしさは、「新鮮だから」「新穀だから」という一つの尺度だけで決まるものではありません。
適切に管理された原料があり、その特徴を理解する人がいて、加工や調理によっておいしさが引き出され、消費者に届けられる。
その過程の中で、雑穀の価値は形になっていきます。
一つのおいしい商品との出会いが、「雑穀っておいしい」という気持ちを生み、別の雑穀食品との出会いや、雑穀そのものの需要へとつながっていく。
日本雑穀アワードでは、そうした「雑穀とのおいしい出会い」を生み出す食品を評価し、その価値を広く伝えていきたいと考えています。
魅力ある雑穀食品がさらに増え、雑穀を知る人、食べる人、好きになる人が、これからもっと広がっていくことを期待しています。
関連情報:雑穀エキスパート講座/日本雑穀アワード/法人会員制度
執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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