雑穀エキスパート講座に込めた思いと未来

知識を学び、判断し、実践へつなげる人材を育てるために

本日は、第66回雑穀エキスパート講座のオンライン認定試験の実施日です。

雑穀エキスパート講座は、雑穀に関する基礎知識、種類や特徴、栄養、調理・利用方法、食品表示や関連制度などを体系的に学ぶ講座です。

しかし、日本雑穀協会がこの講座を開催している目的は、単に知識を伝えることだけではありません。

私たちが大切にしているのは、雑穀を正しく理解し、それぞれの分野で適切に判断し、実践につなげることのできる人材を育てていくことです。

主食を取り巻く環境と、雑穀への新たな関心

近年、主食を取り巻く環境は大きく変化しています。

米価格や供給環境の変化、健康志向の高まり、食の多様化、地域資源の活用、食料安全保障への関心などを背景に、雑穀が注目される機会は少しずつ増えています。

かつて雑穀は、地域の風土や暮らしの中で、人々の命と食生活を支えてきた穀物です。
そして現代においては、補助的な食材としてだけではなく、主食のあり方を支える食材として、また、商品づくり、地域活動、食育、情報発信など、さまざまな場面で新たな役割を担う可能性を持っています。

断片的な知識ではなく、体系的に理解する

近年、雑穀に関する情報は、インターネット上にも数多く見られるようになりました。
さらに、AIなどを活用すれば、情報を集めること自体は以前より容易になっています。

しかしながら、そこで得られる情報は、必ずしも体系的に整理されたものばかりではありません。

定義、分類、歴史的背景、栽培や産地、生産・流通、栄養、調理特性、食品表示、社会的意義までを結びつけて理解しなければ、雑穀の本質を正しく捉えることはできません。
だからこそ、日本雑穀協会は、雑穀を単なる「調べた知識」としてではなく、「体系として理解すること」を重視しています。

雑穀エキスパート講座では、全6科目を通じて、雑穀の基礎から実務に活かせる内容までを段階的に学べる構成としています。

初めて雑穀を学ぶ方にも理解しやすいように構成しながら、同時に、食品メーカー、流通・小売、外食、栄養・料理、地域振興、教育・研究など、それぞれの分野で活用できる知識と視点を身につけていただくことを目指しています。

知識を覚えるだけでなく、判断できる人材へ

雑穀を広めるためには、知識が必要です。

大切なのは、その知識をもとに、目の前の状況をどう見るか、どのように判断するか、そして、どのように実践へつなげるかです。

雑穀の種類ごとの特徴を知ることで、料理や商品への使い方が変わります。
栄養や調理特性を理解することで、無理のない提案ができるようになります。
産地や栽培の背景を知ることで、地域との関わり方が変わります。
食品表示や表現のあり方を学ぶことで、伝える言葉への責任も生まれます。

雑穀エキスパート講座では、こうした一つひとつの知識を、実際の活動の中で活かせるよう、体系的に学ぶことを重視しています。
それは、雑穀を単なる素材として扱うのではなく、食文化、農業、地域、産業、健康、暮らしをつなぐ存在として捉えるためです。

雑穀の価値を多面的に捉える

雑穀は、ひとつの面だけで語れるものではありません。

栄養だけでもありません。
おいしさだけでもありません。
地域性だけでもありません。
商品価値だけでもありません。

それぞれの雑穀が持つ特徴、育ってきた背景、食べ方、伝え方、使われる場面が重なり合うことで、雑穀の価値はより豊かに広がっていきます。

だからこそ、雑穀を学ぶには、断片的な知識ではなく、全体を見渡す視点が必要です。
日本雑穀協会が雑穀エキスパート講座を体系的な講座としているのは、そのためです。

雑穀を正しく知ること。
雑穀の背景を理解すること。
雑穀の可能性を見いだすこと。
そして、それぞれの立場で、雑穀をどのように活かすべきかを判断できるようになること。

そこに、雑穀エキスパート講座の大きな意味があります。

一時的なブームで終わらせないために

雑穀を取り巻く環境が変化する中で、私たちは一時的な話題性や短期的な売れ行きに依存した普及を目指していません。

「健康によさそうだから」
「流行しているから」
「売れそうだから」

そのような見方だけでは、雑穀の本当の価値は社会に根づきません。

一時的に売れることだけを目的にすれば、雑穀は消費されるだけの素材になってしまいます。
正しく理解され、納得して使われ、継続して食べられ、地域や産業の中で活かされていくことで、雑穀は社会に根づいていきます。

日本雑穀協会が目指しているのは、そのような確かな普及です。

そのためには、雑穀を学び、考え、判断し、実践できる人材が必要であり、雑穀エキスパート講座は、その入口となる講座です。

見え方が変わり、実践が変わる

長く講座を続けている中で見えてくるのは、受講後に変わるのは知識の量だけではないということです。

雑穀の見え方が変わる。
食材を見る視点が変わる。
伝える言葉が変わる。

商品やメニューを考えるときの判断が変わる。
地域の食材や農産物を見る意識が変わる。

そうした変化が、それぞれの分野での実践につながっていきます。

知識を得ることで、雑穀の見え方が変わる。
見え方が変わることで、伝え方や活かし方が変わる。

そして、判断が変わることで、それぞれの分野での実践が変わっていく。

雑穀エキスパート講座が長く支持されてきた背景には、このような意識の変化があると考えています。

雑穀エキスパートが担う役割

雑穀エキスパートとは、単に雑穀を知っている人ではありません。
雑穀を正しく理解し、必要な場面で適切に判断し、周囲に信頼できる形で伝えていく人です。

仕事の現場で、商品づくりの場で、地域活動の中で、食育や情報発信の場で、日々の食生活の中で、雑穀の価値をそれぞれの形で活かしていく人です。

雑穀エキスパート講座は、学んだら終わりの講座ではありません。
食を取り巻く環境、制度、研究成果、市場動向は常に変化しています。

知識を更新し続けながら、雑穀の価値を正しく伝え、活動や実務の幅を広げていく。
その確かな基盤として、雑穀エキスパート講座を位置づけています。

日本雑穀協会は、これからもそのための学びの場をつくり、雑穀の健全な普及と市場形成に取り組んでまいります。

 

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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