国産雑穀の安定供給を考える

― 端境期から見える、生産・産地・保管のリスク

雑穀畑で赤い収穫機が作業する風景。『国産雑穀の安定供給を考える―端境期から見える、生産・産地・保管のリスク』の文字を配置したアイキャッチ画像。

近くの食材専門店をのぞくと、ここしばらく「国産たかきび」の欠品が続いています。

いまは、ちょうど雑穀の端境期にあたります。
前年に収穫された雑穀の在庫が少なくなり、一方で、今年育った雑穀はまだ収穫前。新しい穀物が出回るまでの、いわば「季節のすき間」です。

8月も半ばを過ぎ、各地ではこれから雑穀の収穫時期が近づいてきます。

しかし、最近の国産雑穀を取り巻く状況を見ると、単に「端境期だから在庫が少ない」というだけではありません。
その背景には、生産基盤そのものが細くなっていることに加え、気候変動や自然災害など、安定供給を難しくする要因があります。

いま、国産雑穀を「どう調達するか」だけでなく、どう生産し、どう守り、どう次につなぐかを考える必要があります。

近づく雑穀の収穫時期

アワ、ヒエ、キビ、タカキビ、ハトムギなど、雑穀の種類や品種、栽培地域、播種時期、その年の天候によって収穫時期は異なりますが、多くは晩夏から秋にかけて収穫期を迎えます。

野菜や果物のように、収穫後すぐに店頭に並ぶわけではありません。
乾燥、脱穀、選別、必要に応じて精白などの加工、調製を経て、食品原料として流通します。

国産雑穀では、生産者の高齢化や離農、作付面積の縮小など、生産基盤の維持そのものが課題になっています。

需要があっても、すぐに生産量を増やせるわけではありません。

生産者がいること。
種子や栽培技術が受け継がれていること。
乾燥や調製を行う設備があること。

そして、適正な価格で継続して購入する実需者がいること。

これらがつながって、初めて産地は維持されます。

生産量が限られる一方で需要が続けば、特定の産地や生産者に注文が集中します。
現在の国産雑穀は、「必要になったときに市場から調達すればよい原料」とは言いにくくなっています。

産地を分散するという考え方

広く雑穀を取り扱う企業にとって重要なのが、リスク分散です。

雑穀は農産物であり、毎年同じ地域で、同じ量、同じ品質が収穫できるとは限りません。
高温、干ばつ、集中豪雨、台風などによって、一つの産地が大きな影響を受けることもあります。

一つの地域だけに原料を依存していれば、その産地が不作になったとき、商品そのものを作れなくなる可能性があります。
そのため、既存産地を大切にしながら、複数地域での生産や新しい産地づくりを進めることが重要になります。

また、リスクは畑だけではありません。

収穫後の原料を一つの倉庫だけに集中して保管していれば、地震、洪水、浸水、火災などによって、大量の原料を一度に失う可能性があります。

生産地だけでなく、加工拠点や保管場所まで含めて分散を考える必要があります。

雑穀ブレンド商品は「一種類欠けても作れない」

安定供給を考えるうえで、特に象徴的なのが雑穀ブレンド商品です。

例えば、16種類の雑穀を使った商品では、15種類が十分にあっても、残りの1種類が調達できなければ、同じ商品を作ることはできません。

雑穀ブレンドは、多様な穀物を組み合わせられることが魅力である一方、使用する種類が増えるほど、それぞれの原料を安定して確保する必要があります。

さらに、商品規格として、産地や仕様がパッケージや商品情報に反映されている場合、
「その産地の原料がなくなったので、別の産地に替える」という単純な変更はできません。

実際に使用する原料と食品表示の内容は一致している必要があり、産地が商品の特徴や価値になっている場合には、販売機会を失うだけでなく、商品そのものの見直しにもつながります。

だからこそ、商品を企画する段階から、「この原料を安定して将来も使い続けられるか」という視点が必要になります。

「原料を確保する」から「産地を育てる」へ

国産雑穀の生産量が限られるなかで、既存産地から原料を確保することだけを考えていても、全体の生産量は増えません。

必要なのは、生産基盤そのものを広げることです。

既存産地を守りながら、新しい地域での生産可能性を探る。
新たに雑穀栽培に取り組む生産者を支える。
継続的な購入によって、安心して作付けできる環境をつくる。

そして、そこで生産された雑穀を付加価値のある商品につなげ、次の生産へ還元する。

これから求められるのは、原料を「確保する」という発想から、産地を一緒に「育てる」という発想への転換ではないでしょうか。

国産雑穀の安定供給は「仕組みづくり」

国産雑穀の安定供給は、「今年どのくらい収穫できるか」だけの問題ではありません。

生産者、産地、種子、栽培技術、加工、保管、物流、食品表示、商品設計。
これらがすべてつながって、初めて一つの商品が継続して市場に届きます。

このことはつまり、国産雑穀の安定供給は、単なる原料調達ではなく、生産から商品化までを含めた仕組みづくりの問題といえます。

今年の実りを待ちながら思うこと

これから秋に向けて、各地では雑穀の収穫が始まっていきます。

今年も無事に実り、新しい雑穀が収穫され、求める方々へ届くことを願っています。

気候変動や自然災害、生産者の減少など、さまざまなリスクがある時代だからこそ、
「どこから調達するか」だけでなく、「どう産地を育て、どうリスクを分散し、どう次の生産につなげるか」。

今年の新穀を待ちながら、国産雑穀のこれからを支える仕組みについても考えていきたいと思います。

 

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
執筆者プロフィールはこちら

関連記事

  1. ハトムギの生産・輸入データを商品開発と情報発信に活用するイメージ
  2. キヌアの商品化はなぜ広がらないのか 穂と粒
  3. 米、雑穀、パン、おにぎり、パスタ、うどんと比較用プラカードで、主食の多様化を表現したブログ記事アイキャッチ画像
PAGE TOP