AI時代、競争から共創へ

雑穀の価値を、みんなで育てる

AI時代の「共創」をテーマに、朝日の差す田園風景と「競争から共創へ」の文字を配したアイキャッチ画像。

AIの進化によって、私たちはこれまでとは比べものにならないほど多くの情報に、瞬時にアクセスできるようになりました。

知りたいことを調べる。
情報を整理する。
新しい企画や商品、料理のアイデアを考える。

こうしたことが短時間でできる時代になっています。

これは、雑穀の世界にとっても大きな可能性です。

一方で、誰もが多くの情報やアイデアを手にできるようになるほど、「情報を持っていること」だけでは、新しい価値を生み出しにくい時代になっていくとも考えられます。

では、AI時代に何がより大切になるのでしょうか。

その一つが、「共創」ではないかと思います。

市場が広がる時代を支えた「競争」

雑穀が健康的な食材として注目され、市場が広がっていた時代には、「競争」が大きな力になりました。

よりおいしい商品をつくる。
新しい雑穀商品を開発する。
新しい食べ方を提案する。

企業同士が競い合うことで商品の選択肢が増え、売場が広がり、雑穀を知る人、食べる人も増えてきました。

競争が市場そのものを大きくしていく。
そんな時代だったともいえます。

しかし、雑穀がある程度認知され、市場が成熟してきた現在、既存の市場の中で商品同士が競うだけでは、市場全体を大きく動かすことが難しくなっています。

そこで必要になるのが、今ある市場を取り合うのではなく、新しい可能性そのものを、ともにつくるという考え方です。

AIが出すアイデアを、誰が現実にするのか

AIに「雑穀を使った新しい商品を考えて」と問いかければ、瞬時にさまざまなアイデアが出てきます。
料理の提案も、商品コンセプトも、販売方法も考えてくれます。

しかし、それを本当に価値あるものとして形にするには、人の力が必要です。

畑で雑穀を育ててきた生産者だから分かることがあります。
原料を長年扱ってきた企業だから分かる特性があります。

加工して初めて分かる食感や香りがあります。
料理家だから気づく、おいしさの可能性があります。
長年研究を続けてきたからこそ分かる、科学的な知見があります。

そして、その土地で雑穀を食べ続けてきた人だから知っている文化があります。

こうした経験、技術、感覚、文化といった「現場にある知」は、AIから情報を得るだけでは生まれません。

AIによってアイデアを得ることが容易になったからこそ、そのアイデアに誰の経験を掛け合わせ、誰と一緒に形にしていくのかが、これまで以上に重要になっています。

異なるものを掛け合わせる

共創とは、みんなが同じことをすることではありません。

それぞれが違う強みを持っているからこそ意味があります。

生産者とメーカー。
研究者と料理家。
産地と流通。
雑穀業界と異業種。

そして、人とAI。

これまで接点の少なかった知識や技術がつながることで、一社だけでは思いつかなかった商品や食べ方、用途、市場が生まれる可能性があります。

例えば、昔から地域に伝わる雑穀の食文化と、現代の食品加工技術を組み合わせる。
生産現場の課題と、食品メーカーの商品開発力をつなぐ。
雑穀を知らなかった異業種の視点から、新しい用途を考える。
AIで得た発想に、長年培われてきた人の経験を重ねる。

こうした掛け合わせから生まれるものこそ、これからの雑穀市場を動かす新しい力になると考えています。

「答えを探す」から「問いをつくる」時代へ

AI時代には、情報をもとに答えの手がかりやアイデアを得ることが、これまで以上に容易になっています。

だからこそ重要になるのは、「雑穀について何を知っているか」だけではなく、
「雑穀で、これから何ができるだろう」と問いをつくることです。

まだ雑穀が使われていない食品はないだろうか。
新しい食べ方はないだろうか。
新しい産地を育てることはできないだろうか。
地域に眠っている食文化を、現代に生かせないだろうか。
他の産業と組み合わせることで、新しい価値を生み出せないだろうか。

一人では答えの出ない問いを持ち寄り、さまざまな人が知恵を出し合う。
そこに、AI時代の共創の価値があります。

雑穀情報ライブラリーも、共創のきっかけに

「雑穀情報ライブラリー」も、単に情報を蓄積する場所ではなく、新しい問いやつながりが生まれる場所でありたいと考えています。

研究、産地、歴史、文化、料理、商品、市場。

さまざまな情報に触れた人が、
「これとこれを組み合わせたら面白いのではないか」
「この人と一緒なら、新しいことができるのではないか」
と考える。

そこから次の行動が生まれる。

AIによって情報があふれる時代だからこそ、情報と人をつなぎ、さらに人と人をつなぎ、新しい価値へと変えていくことが、より重要になっています。

競争から共創へ

競争がなくなるわけではありません。
企業がそれぞれの強みを磨き、より良い商品をつくる競争は、これからも必要です。

しかし、市場が成熟し、さらにAIによって誰もが多くの情報やアイデアを得られる時代になった今、それだけでは新しい市場を生み出すことは難しくなっています。

これから問われるのは、誰が今ある市場を取るかではなく、誰と新しい可能性をつくるか。

AIを使いながら、人が持つ経験、技術、感覚、文化をつなぐ。
そして、一社では生み出せなかった商品、食べ方、用途、産地、市場を、ともにつくっていく。

競争から共創へ。

AI時代だからこそ、人と人がつながり、知恵や経験を持ち寄る価値は、むしろ大きくなっていく。
雑穀のまだ見えていない可能性を、みんなで見つけ、みんなで育てていく。

その共創の積み重ねが、次の雑穀市場をつくっていくのではないでしょうか。

 

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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