雑穀の価値は新しい品種からも生まれる

高オレイン酸大豆と異業種参入から考える、国産雑穀の新しい可能性

白い木目の背景に、大豆を盛った器と散りばめられた大豆。「雑穀の価値は新しい品種からも生まれる」の文字を添え、高オレイン酸大豆と国産雑穀の新しい可能性を表現した画像。

2026年10月、東京ビッグサイトで開催された「食品開発展2026」。
展示会場を視察する中で印象的だったのが、トヨタ自動車株式会社や本田技研工業株式会社といった自動車メーカーの出展です。

高オレイン酸大豆や微細藻類など、新たな価値を生み出す食素材の展示から、自動車産業で培われた技術や研究開発力を、食や農業に関連する分野にも生かそうとする動きが見られました。

こうした異業種からの参入は、今後の食と農業の産業構造にも、新たな変化をもたらす可能性があります。

今回は、その中でも「高オレイン酸大豆」に注目し、国産雑穀の新しい価値について考えてみたいと思います。

高オレイン酸大豆が持つ新しい価値

オレイン酸は、オリーブオイルにも多く含まれる脂肪酸の一種です。
一般的な大豆では、油脂を構成する脂肪酸のうち、オレイン酸の割合は約20%ですが、高オレイン酸大豆には、その割合を約80%に高めた品種もあります。

これは油脂の量を増やしたのではなく、脂肪酸の組成を変える品種改良によるものです。
オレイン酸の割合が高くなる一方、リノール酸などの割合が低くなることで、油脂が酸化しにくく、大豆特有の青臭さの原因となる成分も生じにくくなります。

こうした特徴から、豆乳や豆腐などの加工食品において、おいしさや品質の向上につながることが期待されています。

その代表的な品種の一つが、佐賀大学の長年にわたる研究から生まれた「佐大HO1号」です。
この品種の開発と実用化には、日本雑穀協会の法人会員である株式会社森光商店も関わってきました。

森光商店では、佐賀大学との連携に加え、高オレイン酸大豆の成分分析や選別技術の高度化などにも取り組み、食品原料としての付加価値を高めています。
また、佐賀大学では、高オレイン酸という特徴を維持しながら、気象変動への対応や収量性の向上を目指した後継品種の育成も進めています。

品種改良によって、おいしさや加工適性だけでなく、栽培の安定性や生産性も高めていくこと。
こうした研究の積み重ねが、国産大豆の新しい需要を生み出し、生産振興につながることが期待されます。

新しい品種から、新しいおいしさへ

2026年10月7日には、キッコーマングループのキッコーマンソイフーズ株式会社から、「佐大HO1号」を使用した「キッコーマン 無調整豆乳 澄み香(すみか)」が発売されました。
同グループのキッコーマン食品株式会社も、日本雑穀協会の法人会員です。

高オレイン酸大豆の特徴と独自の製法を組み合わせ、大豆本来のうま味やコクを保ちながら、青臭さや雑味を抑えた、すっきりとした後味を実現しているとのことです。

注目したいのは、特定の成分を高めるだけでなく、品種の特徴を消費者が実感できるおいしさにつなげていることです。
リリース時の販売先はAmazonと一部小売店となっておりますが、今後の展開が期待されます。

また、高オレイン酸大豆は、豆腐や納豆、大豆ミートなどの大豆加工食品に加え、雑穀ブレンドなど、多様な雑穀加工食品への応用も考えられます。
アワやキビ、ハトムギ、もち麦など、他の雑穀との組み合わせにより、新しい風味や食感、加工用途を持つ商品づくりにも可能性が広がります。

一つの新品種の開発が、その作物の価値を高めるだけでなく、ほかの雑穀との組み合わせによって、新たな商品価値を生み出すきっかけにもなるのです。

産業の変化が、国産雑穀の成長につながる

日本雑穀協会では、大豆などの豆類も雑穀の範囲に含めていますが、雑穀には多様な種類があり、同じ作物でも、品種によって栄養成分や風味、加工適性、栽培特性などが異なります。
高オレイン酸大豆の事例は、新しい商品価値や需要の創出につながる可能性を示しています。

さらに、食品・農業分野に異業種の技術や人材が加わることで、研究開発から生産、加工、流通までの連携が広がり、産業構造そのものが変化していく可能性があります。

近年、日本雑穀協会には、さまざまな業種の法人や団体から入会に関するお問い合わせが増えており、雑穀分野への関心の広がりが感じられます。
こうした動きが新たな需要を生み出し、国産農業、さらには雑穀分野の成長につながることが期待されます。

大切なのは、新しい品種や技術によって生まれた価値が、生産者の収益向上にも結びつき、持続可能な生産を支えていくことです。

新しい品種の開発と、それぞれの産業が持つ技術や知見の融合。

こうした取り組みが、雑穀の新たな価値を生み出し、国産農業や雑穀業界全体の持続的な発展につながっていくことを期待しています。

 

【参考・関連情報】

▶ 森光商店|高オレイン酸大豆
https://high-oledaizu.com/

▶ キッコーマン豆乳|「無調整豆乳 澄み香」サイト
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000236.000114133.html

▶ Amazon「無調整豆乳 澄み香」商品ページ
https://link.amazon/B0cWNYHut

▶ トヨタ自動車|「HAPPY AGRI」サイト
https://www.toyota.co.jp/jpn/happyagri/

執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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