光をたどって、量子の世界

雑穀が、宇宙を目指しています。
ベストアメニティ株式会社の「雑穀ぜんざい」は、北海道産小豆に、もち麦、もちきび、もちあわなど8種類の国内産雑穀を組み合わせた商品です。
日本雑穀アワードでは、2019年から2021年まで3年連続で金賞を受賞し、殿堂入りに認定されています。
その「雑穀ぜんざい」をもとに、宇宙で食べるために改良されたのが「スペース雑穀米ぜんざい」です。
JAXAが認証する「宇宙日本食」の認証取得を目指して、開発が進められてきました。
宇宙では、地上と同じ食品を、そのまま食べられるとは限りません。
重力の小さな環境でも食べやすいように粘度を調整したり、宇宙での味の感じ方を考えて甘みを調整したりと、さまざまな工夫が必要になります。
私たちが地上で食べている雑穀食品が、いつか宇宙で食べられるかもしれない。
そう考えるだけでも、夢が広がってきます。
しかし、雑穀と宇宙のつながりは、「宇宙食」だけではありません。一粒の雑穀そのものをたどってみても、宇宙へとつながっていきます。
一粒の雑穀をつくるもの
アワ、ヒエ、キビ。
手のひらにのせてみれば、とても小さな粒です。
その一粒も、さらに細かく見ていけば、炭素、水素、酸素、窒素など、さまざまな元素からできているという事実があります。
では、その元素は、どこから来たのでしょう。
話は、地球が誕生するよりも、はるか昔までさかのぼります。
現在の宇宙論では、宇宙が誕生した初期には、主に水素やヘリウム、そしてごく少量のリチウムなど、比較的軽い元素がつくられたと考えられています。
その後、宇宙に星が生まれました。
星の内部では、非常に高い温度と圧力のもとで、軽い原子核どうしが結びつく「核融合」が起こります。
この核融合によって、炭素や酸素など、より重い元素がつくられていきました。
超新星爆発や、星から物質が放出される過程などを通して、そうした元素は宇宙空間へ広がっていきます。
そして再び集まり、新しい星や惑星をつくる材料になりました。
約46億年前、私たちが暮らす地球も、そうした宇宙の歴史の中で生まれています。
つまり、一粒の雑穀をつくっている物質をずっとさかのぼっていけば、その向こうには宇宙があるのです。
太陽の光が、一粒を育てる
宇宙とのつながりは、大昔の話だけではありません。
今も毎日、宇宙から地球へ届いているものがあります。
それは、太陽の光です。
アワも、ヒエも、キビも、太陽の光を受けて育ちます。
植物は葉で光を受け取り、光合成を行います。
光合成とは、光のエネルギーを利用して、二酸化炭素と水から有機物をつくり出す仕組みです。
植物はその仕組みによって成長し、やがて穂をつけ、種子を実らせます。
それが、私たちが食べている雑穀です。
約1億5000万キロメートル離れた太陽からやってきた光が植物を育て、その先に、一粒の雑穀が生まれています。
では、その「光」とは、いったい何なのでしょう。
ここからは、目に見えない小さな世界をのぞいてみます。
光は、何でできているのか
私たちの目には、太陽の光は、ひとまとまりの明るさとして見えています。
しかし、光のエネルギーは、「光子(こうし)」と呼ばれる小さな単位でやり取りされています。
物理学では、光子は「光の量子」と呼ばれます。
「量子」とは、エネルギーなどが連続的ではなく、ある小さな単位でやり取りされるときの、その基本的な単位を表す言葉です。
植物の光合成でも、光子は重要な役割を果たしています。
植物の葉には、光を吸収する「葉緑素(クロロフィル)」という色素があります。
太陽から届いた光子を葉緑素が吸収すると、そのエネルギーによって電子が、それまでより高いエネルギーをもった状態になります。
そこから電子の受け渡しが始まり、光のエネルギーが、植物が利用できる化学エネルギーへと変換されていきます。
太陽から地球へ届いた光。
植物の葉。
葉緑素。
光子。
そして電子。
太陽の光を追いかけていくと、宇宙という大きな世界から、いつの間にか原子よりも小さな世界へ入っています。
こうした光子や電子など、とても小さな世界の振る舞いを説明する物理学の理論が「量子力学」です。
つまり、植物が太陽の光を受け取るところを、もっと小さく、もっと小さく見ていけば、自然に量子の世界へたどり着きます。
葉に太陽の光が当たるという、ごく身近な現象の中にも、量子の世界への入口があるのです。
そして、その植物が育てる種子の一つが、雑穀です。
太陽から光が届く。
植物の葉が、その光を受け取る。
光子のエネルギーを葉緑素が吸収する。
電子が動き、光合成の反応が進む。
植物が成長する。
そして、やがて穂ができ、そこに一粒の雑穀が実る。
こうしてたどってみると、一粒の雑穀の向こう側に、とても大きな世界と、とても小さな世界の両方が見えてきます。
星や太陽が存在する、宇宙という大きな世界。
光子や電子が振る舞う、量子という小さな世界。
一見すると正反対の世界ですが、その二つは決して無関係ではありません。
その間をつないでいるものの一つが、太陽から届く「光」です。
宇宙からやってきた光が、一粒の雑穀が育つためのエネルギーになっています。
一粒の雑穀から、宇宙が見える
雑穀を使った食品が宇宙を目指す、夢のある話です。
しかし、一粒の雑穀そのものを見つめてみると、そこにはもう一つの宇宙とのつながりがあります。
宇宙という、とても大きな世界。
量子という、とても小さな世界。
その二つの間に、私たちがいつも食べている一粒の雑穀があります。
大きな世界を見上げてみる。
小さな世界をのぞいてみる。
どちらからたどっていっても、一粒の雑穀には、普段は気づかない壮大な物語が広がっています。
一粒の雑穀から、宇宙が見える。
そう考えてみると、いつもの食卓にある雑穀も、少し違って見えてきますね。
関連情報:雑穀エキスパート講座/日本雑穀アワード/法人会員制度
執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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