脳の働きと食経験から考える雑穀の魅力

同じ雑穀ごはんを食べても、「もちもちしておいしい」と感じる人がいれば、「粒の食感が少し気になる」と感じる人もいます。
同じものを食べているのに、なぜ感じ方が違うのでしょうか。
その理由を考えていくと、私たちが普段何気なく感じている「おいしさ」の奥に、脳の働きや食経験が深く関係していることが見えてきます。
私たちは、世界をありのままに感じているのか
私たちは、目の前にあるものを、そのまま見たり感じたりしていると思っています。
しかし、実際には、目や耳、鼻などから受け取った情報を脳が処理することで、色や音、香りなどを認識しています。
この仕組みは、スマートフォンの画面に例えると分かりやすいかもしれません。
画面には写真や文字が表示されていますが、その裏側では複雑な情報処理が行われています。私たちは、内部の仕組みを意識することなく、画面に映し出された情報を見ています。
私たちの脳にも、これと似た働きがあります。外の世界から届く情報を選び、組み合わせ、理解できる形に整理しているのです。
つまり、私たちが見たり感じたりしているものは、必ずしも物事のすべてをありのままに映したものではなく、脳によって解釈された世界ともいえます。
では、このことは、食べ物のおいしさとどのように関係しているのでしょうか。
おいしさは、舌だけで決まらない
例えば、パクチーの香りを爽やかでおいしいと感じる人がいる一方で、石けんのような香りに感じ、苦手とする人もいます。
こうした違いには、嗅覚の個人差や遺伝的な要因などが関係していると考えられています。
同じ食べ物であっても、感じ取る香りや、その印象が人によって異なるのです。
また、おいしさを決めるのは、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味といった舌で感じる基本的な味覚だけではありません。
農研機構・食品研究部門が公開している研究紹介では、味の感じ方には、香りや見た目といった外からの情報に加え、体調などの影響もあると説明されています。
つまり、おいしさは舌だけで決まるものではなく、さまざまな感覚情報が脳で処理されることで生まれるものなのです。
さらに、食べ物の好みには、それまでの食経験も関係しています。
初めて食べたときには苦手だったものが、何度か食べるうちに好きになることもあります。
おいしさは、食べ物そのものの特徴だけでなく、食べる人の感覚や経験によっても変わるものなのです。
雑穀のおいしさも、人それぞれ
雑穀には、それぞれ異なる味わいや食感があります。
もちあわやもちきびの、やわらかくもちっとした食感。
ひえの、比較的あっさりとした味わい。
たかきびの、しっかりとした噛みごたえ。
もち麦の、もちもち、ぷちぷちとした食感。
こうした特徴を魅力と感じるかどうかも、人によって異なります。
また、同じ雑穀でも、炊き方や料理によって印象が変わります。
少量からごはんに混ぜたり、別の種類を試したり、調理方法を工夫したりすることで、それまで気づかなかったおいしさを発見できるかもしれません。
大切なのは、最初の印象だけで判断せず、さまざまな味わい方があることを知ることではないでしょうか。
おいしさから、雑穀の魅力を広げる
雑穀の魅力を伝えるとき、食物繊維やミネラルなどの栄養面に注目することが多くあります。
もちろん、それも大切な価値のひとつです。
しかし、日々の食生活に取り入れてもらうためには、「おいしく食べられること」も欠かせません。
雑穀のおいしさは、ひとつではありません。
白米に少し加えて楽しむ人もいれば、雑穀の割合を増やして、その風味や食感を楽しむ人もいます。
だからこそ、特定のおいしさを伝えるだけでなく、それぞれの人が好みに合った食べ方を見つけられるよう、多様な楽しみ方を紹介していくことが大切です。
雑穀のおいしさを広げることは、すべての人に同じ味を好きになってもらうことではなく、一人ひとりが新しいおいしさに出会える機会を増やすこと。
昨日まで気づかなかったおいしさに、今日、出会うかもしれません。
そんな視点から、雑穀の魅力を伝えることの大切さを、改めて考えてみたいと思います。
【参考サイト】
▶ 農研機構 食品研究部門「感覚機能解析ユニット」(研究紹介)
https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/introduction/chart/0205/index.html
関連情報:雑穀エキスパート講座/日本雑穀アワード/法人会員制度
執筆:中西 学(一般社団法人日本雑穀協会 事務局長)
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